日本企業がカーブアウトを活用し始めた! 投資ファンドを使って事業を切り出し
企業が子会社や事業部門を、戦略的な意図を持って外部に切り出す「カーブアウト」の動きが一部大手企業の間で少しずつ動き出している。最近では武田薬品工業が子会社である試薬・化成品、臨床検査薬の製造販売会社「和光純薬工業」の売却を検討しているほか、日立製作所グループも上場子会社である電動工具メーカー「日立工機」を売却する意向だと伝えられている。
カーブアウトは、欧米では事業ポートフォリオを機動的に入れ替える手段として、普通に用いられる戦略手法だが、子会社や事業群をポートフォリオとみなして入れ替える発想は、いまだ日本の経営者では一般的とは言えない。切り出した事業や会社の有力な買い手でもある大手投資ファンドの幹部に、日本企業のカーブアウトの現状と課題について話を聞いた。一人は、1987年設立で世界中で投資を行ってきたカーライル・グループの日本法人の大塚博行マネージング ディレクター。もうひとりは三菱商事と三菱東京UFJ銀行の合弁会社・丸の内キャピタルの朝倉陽保社長だ。
少しずつ"マーケットイン"の発想に変わって来た
――日立製作所が子会社売却を検討中と伝えられるなど、日本を代表する企業群がようやくカーブアウトに目を向け始めたように見えます。
大塚 最近、日本の会社は海外M&Aを活発に行っている。その多くはファンドが保有していた会社を買っている。ダイキン工業が(37億ドルで)買収したグッドマンやリクシルのグローエ買収、日立金属のワウパカ買収もそうだ。プライベート・エクイティ・ファンド(PE)が間に介在することで、欧米では業界再編が起きている。しかし、日本の場合、私たちのようなPEが進出するのも遅かったし、先入観もあってなかなか活用されなかった。
欧米でも業界再編はそう簡単には起きない。しかし、PEが介在することで多少起きやすくなる。その流れが日本にも来ているかな、というのが私の最近の感覚だ。日本の会社はたくさんのディビジョン(事業部門)を持っていて、事業部門のトップにしてみれば、身内(事業部門)を減らそうという話は自分の存在意義がなくなっていくということを意味する。だから、そういう話は出にくかった。大企業グループのCEOでも「ノンコアって儲かっていない会社のことですか」という人もいるが、最近は少しずつ変わってきている。
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