「働く留学生」がこのまちを支えている 「留学生アルバイト事情」最前線をいく

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「弊社では、『シフトワークス』というアルバイト情報サイトを展開しているのですが、2016年頃から『人が採れない、どうしたらいいだろうか』という声を、企業側からよく聞くようになりました。その頃から、主婦やシニア層が注目され始めたのと同じように、外国人の採用にも目が向くようになってきたという流れがあります」

アルバイト応募に訪れた留学生との面談風景。左が株式会社インディバル「ニホン de バイト」事業責任者の加藤寛康さん(写真:株式会社インディバル)

そう語るのは、株式会社インディバル、サービス推進本部の加藤寛康(ひろやす)さんだ。加藤さんは、昨年1月に留学生向けに特化した求人情報サイト「ニホンde バイト」を立ち上げた。サイトは日本語のほか英語、中国語、ベトナム語、韓国語など5カ国語に対応しており、日本語レベルに応じてバイトを探すこともできる。

2年ほど前から始まった、深刻な人手不足。これが、留学生アルバイト急増の背景にあるようだ。特に居酒屋やコンビニなど、これまで日本人の若者や大学生を中心にアルバイトを集めてきた業界では、若い世代の人口減少の影響も大きいという。「ニホンdeバイト」で掲載しているアルバイトには、毎月延べ数千件の応募があり、現在もその数字は伸び続けているそうだ。

留学生側に視点を向けると、彼らがアルバイトを見つける経路は、大きく3つに分けられる。日本語学校からの紹介、友人からの紹介、そしてウェブやフリーペーパー。宅配・運送業や工場での軽作業など、日本語が片言でもできるタイプの仕事は、日本語学校が斡旋していることが多く、「ニホンdeバイト」のような求人サイトでは、日本語をより必要とするサービス業のアルバイトを扱うことが多いという。

求められる日本語レベルの低い順に、サービス業のアルバイトを挙げると、まずは居酒屋のキッチン、次に居酒屋のホール、そして最後にコンビニという順番になるそうだ。「コンビニは、たとえば宅配便の処理や公共料金の支払いといった多様な業務を覚えたり、スタッフ2人で回さないといけない時間帯があったり、とにかく求められるレベルが高いんです」。日本語でのコミュニケーションの必要性や業務の複雑さによって、仕事の難易度が上がっていくのである。

ウェブからリアルへ。外国人スタッフも在籍

「ニホンdeバイト」運営スタッフには、さまざまな国の留学生との会話に対応できるよう、20人もの外国人スタッフが在籍しているという。国籍は、ベトナム、インドネシア、中国、台湾、メキシコ、フィリピン、ネパールなど。さらに毎月数回、リアルな現場での「面接イベント」も開催しているという。「アルバイト情報サイト」という言葉のイメージよりは、だいぶ汗の匂いのする事業モデルのようだ。

インディバルが主催する、面接イベントの様子。 さまざまな国籍の留学生と直接会って、クライアントとマッチングする(写真:株式会社インディバル)

「実は最初は、日本人向けサイトと同じように、ウェブで完結するビジネスだと思っていました。でも、事業を展開する中で、より踏み込んだ介在やサポートが必要だということがわかってきたんです」と加藤さんは言う。

「大手の求人サイトにとっては、本気でやるほど大きな市場ではないかもしれません。手間やコストもかかりますから。実際、新しい事業者が、できてはなくなっていくという状況で、本当にこのビジネスが成り立つのかどうか、うちも含めて、まだ、どこも『正解』を見つけていないのではないでしょうか。だからこそ、チャンスだとも思っています」

留学生向けのアルバイト情報サイトの利益を圧迫する要因としては、コミュニケーションや翻訳などで手間やコストがかかることに加えて、求人サイトに支払う費用を、日本人の採用に比べ低く抑えようとする企業側の姿勢もあるという。以前よりは、外国人の採用に積極的な企業も増えてきたが、いまだに外国人というだけでお断りという店も少なくはないそうだ。

「外国人を雇う上で一番大事なのは『マインド』です。コンビニや居酒屋チェーンの本社が、外国人を積極的に採用する方針でも、現場の店長との意識のギャップがあることも多い。一緒に働く上で、日本での常識が通用しないことにイライラしたり、きちんと教育できずに放っておいたら、うまくいくものもいきません。今、留学生アルバイトに頼っている業種は少なくありませんから、雇用者側の意識を変えていくことが、とても重要だと思います」。

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