核実験凍結声明ににじむ北朝鮮の「真意」 重大問題については触れていない
韓国と日本に対するミサイルの脅威が維持されたまま、米国本土に対する脅威だけが軽減されるとなれば、米韓、日米の同盟関係にヒビが入る危険性が出てくる。
米国政府に対して、自国への直接的脅威を減らすチャンスが北朝鮮から差し出される中、日韓に対する米国の軍事的関与はこれから政治問題化していくことが予想される。かなり長い目で見ての話だが、米国にしてみれば、朝鮮半島から軍隊を引き上げることのインセンティブが徐々に強まっていくからである。
声明はいとも簡単に覆される可能性も
決定書は人工衛星の打ち上げにもまったく触れていない。だが、人工衛星の打ち上げについては、米国は従来からICBM発射実験の隠れみのになっていると考えてきた。
米朝は2012年2月、北朝鮮が核実験や長距離ミサイルの発射実験を行わないことと引き替えに、米国が人道的な食糧支援を行うとした「閏日合意」に達したが、直後の4月に北朝鮮が人工衛星打ち上げを名目に長距離弾道ミサイル「テポドン2」の改良型と見られる「銀河3」の発射実験を強行。米国はこれを約束違反と見なし、閏日合意は崩壊した。
人工衛星打ち上げを名目としたミサイル発射実験は、核問題解決のための6カ国協議(米朝中に日韓、ロシアが加わったもの)が2009年に頓挫するきっかけにもなっている。
核実験やICBMの発射実験の終了は、何らかの条約によって拘束力を持たせられるのであれば、よいスタートといえるだろう。ただし、これは非核化とは違うし、北朝鮮が行う声明はいとも簡単に覆されることがある点にも注意が必要だ。
また、ICBMの発射実験禁止については、さまざまな重要問題がくすぶっている。日韓への脅威が大きく減ることなく、米国本土に対する脅威だけが減る状況となれば、同盟が崩壊する恐れが出てくる。人工衛星の打ち上げ問題も、これが引き金となってこれまでにいくつもの合意枠組みが破綻しており、関係国によって異なった解釈ができないような確固たる合意内容としなければならない。
これらの長年の重要問題については、来たる南北首脳会談や米朝首脳会談、あるいは、その先の外交交渉のどちらかにおいて、議論の余地がないほど明確に対処していく必要がある。
(文:Scott LaFoy)
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