核実験凍結声明ににじむ北朝鮮の「真意」 重大問題については触れていない

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何にも増して重要なのは、北朝鮮という国の中核を成す核抑止力の獲得が完了した、という状況を北朝鮮が一連の声明によって描き出そうとしている点にある。これは、何かが完了したことを示すものであって、何かが終わったことを告げるものではない。

ミサイル打ち上げ実験を見守る金正恩委員長(写真: KCNA)

非核化や核軍縮の可能性は潜在的には確かに存在しているが、北朝鮮政府は米韓との首脳会談を前に、核戦力が重要な国家資産となっている点を強調することによって、交渉力の強化を図っているものと見られる。

つまり、これはある程度までは、核が「交渉のテーブル」に乗った可能性があることを示している。もちろん、北朝鮮は核ミサイルに対して巨額の投資を行っており、将来のどのような首脳会談においても、非核化の結論を引き出すのは難しいだろう。

ICBM以外のミサイルや核弾頭の生産は?

しかし、核戦力のコントロールならば、現実的な選択肢となり得る。

もちろん、これは米国が望んでいるものとは違うが、何らかの譲歩を差し出すことによって、戦略兵器(あるいは将来のミサイル開発)に制限をかけられるのなら、それはそれで交渉する価値のある協定といえるのではないか。

今回の北朝鮮の決定書には含まれていないのが、韓国と日本にある米軍基地を射程に収め、中国やロシアにも照準を合わせることのできるミサイルシステムだ。発射実験の中止は、米国とグアムなど米国の海外領土に向けられる可能性のあるミサイルだけが対象になっている。核弾頭を搭載することのできる短距離ミサイルや潜水艦から発射する弾道ミサイルは、実験中止の対象には含まれていない。

ウラン濃縮活動や核分裂物質の生成、ミサイル生産、配備数についての制限も、決定書には盛り込まれていない。金正恩氏は「新年の辞」で、核とミサイル戦力の量的拡大を宣言しており、潜水艦発射弾道ミサイル「北極星1」を含むICBM以外のミサイルの生産や配備、実験は継続される可能性がある。核弾頭の生産も続くかもしれない。

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