上司の「なぜできない」はイジメと変わらない 能力不足を否定しても雰囲気が悪くなるだけ

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また、これはある会社の社長から言われたことですが、その人は「“なぜできない”と他人の能力を責めるのは、イジメと同じだ」とおっしゃっていました。例えば、体に障害があるなど、能力的にできないことが目で見てわかれば、その人にできないことを責めたりはしませんが、仕事上の能力となると、これは内面にあるので、なかなか見えにくいものです。自分の基準でできると思ってやらせてみて、それができないのは実行する人の能力が足りなかったという考え方です。確かに正論ではありますは、できないことはできないのだから、それを指摘して責めるのはイジメと同じことだというのです。

この社長は、「できないことを責めるのではなく、相手の能力をよく考えて、相手目線で指導しないといけない」とおっしゃっていましたが、これは私が今まで見てきた優れたリーダーたちの行動とも一致します。個々のメンバーがどんな能力を持っているのかは、リーダーとしてしっかり把握していなければなりません。

チームの総合力は個々の能力の把握から

最近は一部のリーダーの中で、すぐに「使えない」「いらない」などのよくない言葉で相手を非難したり、少しでも能力不足を感じると、早い見切りで戦力とみなさずに排除したりする光景を見かけることが増えました。

確かにビジネスのスピードは速くなり、一つひとつのことに時間をかける余裕はなくなっています。しかし、能力不足を責めたり、できないからといって切り捨てても、何も問題は解決せず、チームの総合力は逆に低下していきます。いかにメンバーに最大の能力を発揮させるかを考えるならば、メンバーが持つ能力を放棄、排除するという選択はあり得ません。チームにあるすべてのリソースを活かそうとしなければ、リーダーとしては失格です。

ここで大事になってくるのが、適材適所の考え方です。できないことをできるようにする努力は、ビジネスパーソンとして必ず取り組まなければならないことですが、スキルを身に付けるためには、それなりの時間が必要です。その捉え方を間違えてしまうと、「なぜできない」「これくらいはできて当たり前だ」などと非難したり、無駄な頑張りを要求したりすることになります。

同じ頑張りならば、できないことや苦手なことに時間を費やすよりは、少しでもできること、得意なことや向いていることに時間と労力を使った方が、チーム総合力アップのためには早道です。

最後に、相手を責める口調になるのを避けるために私が意識していることとして、「Iメッセージ」というものがあります。相手を主語にした「Youメッセージ」は、どうしても相手を責めるニュアンスになりやすく、これに対して自分を主語にした「Iメッセージ」の方が、自分の感情を伝えるニュアンスになり、相手が受け入れやすい柔らかな表現になるというものです。例えば、「(あなたは)なぜ遅刻したのか」と言うよりは、「(私は)遅いから心配していた」と言った方が、相手にとっては受け入れやすいニュアンスになるといえばわかりやすいでしょう。

できるリーダーは、メンバーの能力不足を責めることをせず、何がどれだけできるかを、メンバーと一緒に考えます。そのためにメンバー個々の能力を見極めて適材適所を考え、それぞれに合わせた指導をしています。チーム内にあるリソースを最大限に活かすことを考え、切り捨てや排除は絶対にしません。

ある分野の仕事では能力不足だったとしても、異なる仕事では力を発揮する人がいます。それをしっかり見つけていけば、チーム全体の総合力は確実に上がっていきます。ぜひ、メンバーの「できないこと」ではなく、「できること」に注目しましょう。

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アルファポリスビジネス編集部

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