新燃費基準WLTCを知らない人に教えたい基本

18年10月以降導入、実燃費との差は埋まるか

しかし、こうした改訂が繰り返され、また世界基準の燃費計測法が導入されてもなお、実走行との燃費値に差は出るはずだ。理由は、4つある。

実走行との燃費値に差が出る理由

①燃費の計測時にエアコンディショナー(空調)は使われていない
②自動車メーカーはどのような基準であっても指定されたモードで最高の燃費を出せるような開発を使う可能性がある
③世界の各地域によって交通環境が異なる
④実際の運転状況は千差万別である

①燃費計測時にエアコンが使われない理由は、暖房こそ備わっていても、冷房機能を持たない車種が世の中にはまだあるためで、統一基準で計測するには空調を使わないで行わざるをえないからである。

一方、実際の市場ではエアコンが使われるクルマはほぼすべてといって過言ではないのではないか。そしてエアコンを使えば、その動力として消費される燃料分が燃費の悪化につながり、主要諸元表に記載された燃費性能を実用で実現するのが難しくなる。このことは、エンジン車のみならず電気自動車でも同様だ。

また、オートエアコンの普及により、実は空調を使わなくても快適な季節であってもスイッチを入れっぱなしにする利用者が多いため、年間を通じて燃費は悪化傾向になる。もちろん、真夏や真冬に比べれば、室内外の温度差が小さくなる春や秋の燃費性能への影響は少なくなるはずだが。

②は市場で性能の優劣を数値で比較することが続くかぎり起こる。これは燃費に限らず、馬力でも永年行われてきたことだ。200馬力と250馬力なら、250馬力のほうが凄いという価値観である。しかし、ドイツのアウトバーンをつねに時速200kmで走るというならまだしも、国内で高速道路を走っても時速100km制限があるうちは、ほとんど意味をなさない価値観である。せいぜい、見栄を満たすくらいだ。

燃費においても、たとえば1リッターあたり30kmも走れれば十分な燃費性能であると考えられるが、ある軽自動車の新車発表の場で、競合他社の燃費性能を超えていなかったことに対し、某媒体の記者は「燃費向上をあきらめたのか?」と質問した。自動車メーカー側は、燃費だけでなく加速性能を含め総合的に顧客満足を高める開発をしたと説明したにもかかわらずである。

報道媒体さえそのような一元的な価値観で新商品を見て記事を構成するなら、自動車メーカーも燃費数値に血道をあげざるをえない。その視点からすると、燃費偽装問題は報道媒体が素地を作ってきたとも言えなくないのである。

それら消費者や報道媒体の体質によって、諸元としての燃費と実燃費の差は、どのような燃費測定基準を定めても埋まらないことになる。

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