新燃費基準WLTCを知らない人に教えたい基本 18年10月以降導入、実燃費との差は埋まるか

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JC08モードとWLTCの違いを大枠で比較してみると、

・WLTCの市街地モードを除き、走行速度がWLTCは速い
・アイドリングストップ時間が短く、WLTCの市街地モードでもJC08モードより短い
・エンジンが冷えた状態からの始動がJC08モードでは25%であったのが、WLTCは100%になる
・審査の際の車両重量は、JC08モードが2名乗車を想定したプラス110kgであるのに対し、WLTCは1名乗車と荷物相当の100kgに、そのクルマの積載可能重量の15%をプラスすることになる。これにより、全体的にWLTCのほうが重量増となる
・WLTCの高速道路モードをのぞき、加速がJC08モードより急である

以上から、全体的によりガソリン消費が増える傾向の試験モードとなっている。

JC08モードからWLTCへ、燃費性能の表示変更が決まった背景は、2016年に三菱と日産自動車の軽自動車で判明した燃費性能の偽装問題を発端としている。国土交通省への認証に際し、国が定めた試験方法によらず燃費を計測し、申請していたことが発覚した。その余波は、スズキやスバルにも及んでいる。

かねてより、実用での燃費とカタログ表記の燃費性能に乖離があると消費者からの指摘もあったことから、国際的な燃費指標であるWLTCに日本も統一する動きとなった。

JC08モードの前にも何度か改訂を受けてきた

とはいえ、JC08モードの前にも何度か燃費測定方法は改訂を受けてきた歴史がある。当初は、国内の普通乗用車の制限速度上限である時速60kmでの一定速度での燃費を表記してきた。これを、60km/h定地燃費と言った。しかしこれでは、発進と停止を繰り返す市街地での燃費性能は表せないこと。また、一定速度での燃費だけをよくしようとした新車開発が行われるなどの弊害も生じた。

そこで、運輸省(当時。現・国土交通省)が1973年(昭和48年)に、10モード燃費を定めた。これは、エンジン始動後のアイドリング状態から、時速40kmまでの発進加速と停車を繰り返す試験方法であった。しかし逆に、これでは市街地だけの走行を模擬した方法であったため、1991年(平成3年)に、郊外の道路を走ることを想定したモードを加え、10・15モード燃費となったのである。

それでもなお、実走行での燃費に乖離があるとされ、2011年(平成23年)に今日のJC08モードへ変更されたいきさつがある。JC08モードでは、都市高速での走行などを加味してより最高速度が速まり、また、従来はエンジン始動後アイドリングを経てエンジンが温まった状態から計測開始となったが、JC08モードではその日最初にエンジンを始動したときを加え、エンジンが冷えた状態から燃費計測をはじめる改訂を行っている。

それでもまだ、実際の用途での燃費と異なるとのことから、WLTCへ変更されることになったのだ。

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