デフ五輪陸上金メダルの三枝浩基が目指す夢 険しい道のりを越えてつかんだ世界一の先
三枝はデフリンピックでメダルを獲得して引退する予定であったが、入賞という結果に中途半端な気持ちを抱いていた。
ちょうどその頃、エイベックスからプロアスリート契約の話が舞い込んできた。 契約内容は、選手として陸上に専念できるというもの。活動費用など手厚いサポートを受けられるようになった。
「プロ契約すれば、陸上を中心とした生活を送ることができるし、今よりも環境がよくなるからメダルを十分狙える」と迷わず契約をした三枝が、4年後のデフリンピックに向け必ずメダルを獲る決意をした瞬間でもあった。
そして、2017年7月、トルコ・サムスンで行われた第23回夏季デフリンピックで4×100mリレーの日本代表メンバー(三枝浩基・設楽明寿・佐々木琢磨・山田真樹)の4人は金メダルを獲得することができたのだ。
世界一となった三枝はさらなる高みを目指している。
「4×100mリレーで世界一になりましたが、やはり選手としては個人種目でメダルを獲りたい。本物の実力を身に付けたいです」と三枝は、3年後のデフリンピックに向けて、陸上指導者兼通訳担当の竹重雅樹コーチと辰谷新太郎フィジカルトレーナー(PEP Osaka)とともに練習に励んでいる。
陸上人生に影響を与えた竹重コーチとの運命的出会い
2012年4月に開催された健常者も出場する大会で、三枝はスタート時に、審判から注意を受けてしまう。スターターの音が聞き取れないがために走り出してしまったのだ。その一連のシーンを目撃し、気にかけて声をかけてきたのが竹重コーチだった。
「耳が聞こえないのですか? 私は手話ができますよ。審判はどのような注意をしましたか? スターターの音が英語なので、ちゃんと気をつけてください」などと竹重コーチは非常にわかりやすく手話通訳をしてくれたのだ。この時の出会いは運命的なものとなった。
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