立ち入り厳禁!最先端「航空機タイヤ」の秘密 ブリヂストンが創業の地で手掛ける最新技術

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航空機タイヤには1本で約25トンを支える強度が必要になる(写真:ブリヂストン)

ブリヂストンの創業の地、福岡県久留米市。80年以上にわたり続く久留米工場は、1937年まで本社が置かれた同社の最も古い工場だが、いま最先端の工場に生まれ変わっている。

JR鹿児島本線、久留米駅から徒歩3分。ケヤキ並木が続くブリヂストン通りに面して建つのが、その久留米工場だ。タイヤの国産化を使命に、創業者の石橋正二郎が久留米でタイヤ生産を始めたのは1931年。前年に日本足袋(たび)のタイヤ部として第1号タイヤを誕生させ、この年に「ブリッヂストンタイヤ」を設立してのことだった。以来、久留米はマザー工場として最先端の生産技術を磨いている。

関係者以外はいっさい立ち入り禁止

その久留米工場の中で、関係者以外の立ち入りをいっさい禁止している一角がある。航空機タイヤの生産工場だ。内部の従業員ですら、立ち入りは厳禁。特に航空機向けラジアルタイヤの製造工程は最高ランクの機密で、外部には監査のときにしか見せないという。

立ち入りを禁止している航空機タイヤの生産工場(記者撮影)

航空機タイヤは、東京工場(東京都小平市)とこの久留米工場でしか生産していない。久留米での足元の生産本数は、日産240本程度。現在では約21億円を投じた能力増強が進行中だ。今年末までに1.5倍増とする計画であり、需要が高まるリージョナルジェットなどの新興勢力向けに供給を拡大する。

航空機タイヤは、厳しい負荷に耐えることが求められる製品だ。まず、乗用車の50倍にもなるという大きな荷重に耐える必要がある。滑走路での走行時には最大級の旅客機で560トンある機体を、前脚2本、主脚20本で支えなければならない。つまりタイヤ1本で約25トンを支えることになる。乗用車なら1本で0.4トン程度。地上旋回時にたわみや引きずりが生じることもハードルとなる。

その一方で、離着陸時には高速になる。特に離陸時には時速350キロメートルにもなり、F1並みの高速に耐えるタイヤ性能が求められる。まさに高付加価値タイヤの象徴的な存在だ。

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