「ITオンチの管理職」が迷惑でしかない3理由 「文系だからいい」ではもうすまされない
(1)「フェイスブックみたいに!」:プロジェクトの泥沼化
ITオンチの管理職でも、アプリの制作や新しい業務システムの導入など、ちょっとしたITプロジェクトの発注責任者や予算承認者になることはよくある話です。もちろん、ITベンダーの方との実務的なやりとりは現場の人間がしますが、責任者という立場上、ITオンチの管理職であっても何かしらの要望を出すのが一般的です。
ここでありがちなのは、その要望が、ITベンダーの立場からすると意味不明、あるいは無理難題となってしまうことです。たとえば以下のような感じです。
「社内と顧客向けのオリジナルのコミュニケーションサイトが欲しい。フェイスブックみたいな感じで「いいね!」的な機能を数種類用意したいですね。PCとスマホでも画面のイメージとか情報量は同じほうがいい。インターフェースは極力見やすいもので、クラウドを使ってコストダウンもしたいので、いちばんいいクラウドサービスを使ってください」
これだけ見ると「何が問題?」と思われる方もいるかもしれませんが、それに気がつかないのはちょっと危険信号です。
まず、上記の要望をすべて取り入れると、高額なプロジェクトになるでしょう。フェイスブックはとてつもない資金と人材を投入しているからあの使い勝手を実現しているのであって、それを実現するのは通常の企業が簡単にできる話ではありません。
予算もありますから、どこかで妥協することになりますが、中途半端な妥協のせいで、中途半端な出来のものになってしまうのがオチですし、納期も遅れるでしょう。これでは企業の競争力は担保できません。
ITプロジェクトを進める際には、まずはそれを使って「何を実現したいか」を明確に決める必要があります。先の例で言えば、「『いいね!』的な機能を数種類用意したい」のは何のためかを考える必要があります。そこで実は不要だったという結論が出ることもあるでしょう。
要件定義と仕様がITプロジェクトの肝
ITプロジェクトで実現したいことを定義することを「要件定義」と言います。それをアルゴリズム(コンピュータを利用して課題解決するための処理手順)に落としたものが「仕様」です。
この要件定義と仕様がITプロジェクトの肝であり、自社内でもそれを考えられると圧倒的に生産性が上がります。しかし、そこに目配せできる発注側の管理職はまれです。
要望はいろいろ言うが、その先の大変さは理解していない、それでいて妥協をしたから不満はたまる。出来栄えには横から口出しするので混乱や不信を招く、という管理職が非常に多いのです。
自分でアルゴリズムを作ることができなくても、「何を実現したいのか」「そもそもそれはITシステムで解決すべき課題なのか」くらいは考えられないと、企業の生産性を大きく損ねてしまいます。
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