中国、「世界一のイノベーション大国」に王手 知的財産権で米国を猛追している

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しかも中国の研究者数は増加の一途をたどりそうだ。国連教育科学文化機関によると、中国は中等教育を受けた人の40%がさらに上の「第3期教育」に進んでいる。米国に比べると比率は半分だが、1970年代の0.1%に比べると驚異的な増え方だ。

JPモルガン・アセット・マネジメントでアジア新興国市場担当の最高投資責任者を務めるリチャード・ティザリントン氏は「5、10年後を見据えれば、技術革新、特にオンライン・プラットフォーム、デジタル・イノベーション、機械学習、人工知能の分野で米中がほぼ肩を並べているだろう」と見る。

質に目を向けると、まだ米国との差は大きい

ティザリントン氏によれば、中国が米国を追い抜いている分野の好例がオンライン決済だ。中国の主要都市では決済手段として携帯電話がクレジットカードをほぼ完全に駆逐した一方、「米国には小切手を使っている人がまだ多くいる」

もっとも知的財産専門家によると、中国は半導体やロボット技術、バイオ技術などの面ではまだ出遅れている。

また、特許の件数ではなく質に目を向けると、まだ米国との差は大きい。

情報サービス企業、クラリベイト・アナリティクスが、特許の数だけでなく影響力に基づいて選んだ昨年の技術革新企業トップ100社に入った中国企業は、通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)の1社にとどまった。

また情報分析会社エルスビアによると、中国で2016年に作成された科学論文は約50万本と世界2位で、首位米国の60万本に迫った。しかし論文1本当たりの引用回数は中国が0.93回と、米国の1.23回に比べて見劣りした。引用回数は他の研究者による評価の尺度になる。

法律家らによると、米国が中国の技術進歩を抑えたいと思った場合、米企業による中国企業へのライセンス供与をさらに制限したり、企業秘密の定義を広げるといった可能性が考えられる。

しかしそうした措置に出れば、企業は巨大な中国市場へのアクセスを維持するために米国外に法人を設置するなど迂回策を編み出すため、逆効果になりかねないと法律家らは警告している。

(Marius Zaharia記者)

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