eスポーツ上位選手がプロを目指さない理由 スマブラプレーヤー「あばだんご」氏を直撃

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――安定して大会を開くために運営におカネを回すのはもっともだと思います。ただ、選手としては稼ぐ手段がないと続けていけないのではないでしょうか。

河村:確かに『スマブラ』のプレーヤーの選手生命は大学生までと言われていたりします。社会人になってもガチでやりこめて、さらにトッププレーヤーとして走り続けられるのは、ほんのわずかなわけです。海外では賞金やスポンサー事情が日本よりもよいので、海外の『スマブラ』のトッププレーヤーは専業でプロとして活躍している人もいます。

そういう人と渡り合えるようになるには、やはり専業でプロになるのが最も確実なのですが、『スマブラ』に関しては日本の大会で賞金がなかったり、スポンサーがつきにくかったりと、プロにはなりにくい状況なので、学生までしか通用しないと言われているんです。活動の拠点を海外に移せばなんとかなるかもしれませんが……。そういった意味で、ほかのゲームと違い『スマブラ』でプロを目指す人がほとんどいないというのもありますね。

すべての人がプロになりたいわけではない

――賞金を稼げなかったりスポンサーがつきにくい状況がなくても、プロを目指さないという人は多いのでしょうか。

河村:コミュニティ発祥で、好きなものをみんなで集まってプレーするというのが心地よいので、それ以上の状況を求めている人は少ないかもしれません。『スマブラ』に関してはプロゲーマーになるためにゲームをしているという人は多くないと思います。腕が立って、大会で好成績を残せたからといって、すべての人がプロになりたいわけではないんです。

闘会議2018「大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U niconicoチャンピオンシップ2018」の様子(筆者撮影)

たぶん、これは『スマブラ』だけでなく、ほかのeスポーツゲームタイトルの大会に出ている人も感じていると思います。プロになるということはある意味覚悟が必要だと思います。ほかのプロスポーツ選手と同じような立場になるとしたら、ある程度プライベートもさらけ出されてしまいますし、いろいろな制約も出てきます。そんなことを背負わされるなら今までどおり好きなゲームを好きなときに遊んでいるほうがいいんでしょうね。

――なるほど。これまでのeスポーツ大会はどうしてもゴルフやテニスのようなプロの大会をイメージしてきましたが、市民マラソンのように、参加すること自体を楽しむ大会もあるということですね。

河村:eスポーツ自体は肯定しますし、はやってほしいと思っていますけど、プロ化やオリンピック種目になるということに対してはまったく興味がない人もいるってことですね。オリンピック種目になることはすばらしいことだとは思いますが、eスポーツ大会に出場する人や運営する人の総意であるとは限らないと思います。

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