「かぼちゃの馬車」騒動が映す不動産投資の罠 大空室時代が到来、ブームから生存競争へ
一方、オーナーらは破産の道を選択すべきだと主張する。会社主導で進む民事再生ではなく、今すぐ破産させて破産管財人を入れた厳正な手続きのもとで、真相を解明して欲しいからだ。彼らの多くは、「かぼちゃの馬車」投資のスキームの片棒を担いだとみて、スルガ銀行に怒りの矛先を向けている。
50代オーナーは「スマートデイズは最低だけど、それよりスルガ銀行が許せない。民事再生になればおカネの流れを解明できず、スルガ銀行を責める手立てがふさがれる。それは避けたい」と話す。今回の融資にあたっては、多くのオーナーが預金額や年収の水増しなど、融資関係書類が改ざんされていたと訴えている。
このオーナーらはシェアハウス投資自体の白紙撤回を目標に掲げるが、道のりは容易ではない。まずは会社が狙う民事再生手続きへの流れを阻止し、スマートデイズを破産に持ち込むことができるか。これが最初のハードルとなる。
相続増税対策と金融緩和でブーム化
かぼちゃの馬車は、サブリース会社の事業モデルや銀行融資審査のずさんさが問題化した特殊なケースだといえる。ただ、そこで顕在化している空室リスク自体は、あらゆる不動産投資家にとって他人事ではないと警鐘を鳴らすのが、不動産オーナー向けのコンサルティング業務を手掛ける税理士の金井義家氏だ。
「かぼちゃの馬車はオーナーの多くがサラリーマン。資本力が乏しいためにローン返済に窮した。ただ今後、人口減で空室が増えれば、資金力に余裕がある地主の中でも、ローン返済に行き詰まるケースが増える可能性がある」(金井氏)。どういうことか――。
そもそも、主に金融機関から融資を受けて新築や中古の区分マンション、さらには1棟アパートやシェアハウスといった物件を購入し、入居者からの家賃収入や物件売却による利ザヤを稼ぐのが不動産投資である。
不動産投資はここ数年、ブーム化の様相を呈していた。2015年の相続増税により、現金や土地よりも賃貸物件を持つほうが節税につながるとして、地主がアパートを次々建設。2016年以降のマイナス金利下で金融機関が積極融資に走ったことで、「サラリーマン大家」も続々と誕生した。