「かぼちゃの馬車」騒動が映す不動産投資の罠 大空室時代が到来、ブームから生存競争へ

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しかし昨年以降、景色が変わりつつある。要因は金融機関の融資姿勢の変化だ。金融庁が、アパートやマンション融資におけるリスクの評価や借り手への説明を強調したことなどで、金融機関による融資の積極姿勢が鈍化。ある不動産業者の担当者は「これまでのように誰でもカネを借りやすい状況ではなくなった。借り手の勤務先などの属性が重視されている」と話す。

その結果、不動産投資の対象となる貸家の着工戸数は頭打ちに。一方で、すでに完成した物件数は高水準であるため、徐々に空室率の悪化が顕在化している。首都圏の1都3県について、不動産調査会社タスが独自算出した空室率指標(空室率TVI)の推移を示した図を見ると、不動産投資が活況を呈した2015年秋以降、アパートの空室率が上昇傾向にあることがわかる。

今後は人口動態が逆風となる。地方はすでに人口減少下にあり、住宅需要は右肩下がり。首都圏では賃貸需要の強い単身世帯は増加が続くが、その反転も時間の問題だ。日本銀行は全国のアパートなど貸家の入居戸数が2020年をピークに減少すると推計している。物件の供給過剰に人口減少が重なり、“大空室時代”到来が懸念される。

賃貸物件は価格上昇時に売却して利ザヤを出すか、持ち続けてローンを完済し、トータルでのキャッシュフローがプラスとなったときに初めて成功したといえる。30年ほどの長期でローンを組むケースもあり、息の長い投資となる。

ローン完済にたどり着かなければゴールではない

「不動産投資はローン完済にたどり着くことがゴール。ただ、順調にゴールし利益を残せる人は実はそれほど多くない」。前出の金井氏はそう話す。「1980年代後半にも不動産投資ブームがあったが、当時アパートなどを建て、ローン返済のゴールに無事たどり着いたオーナーは、皮膚感覚では1割程度だ」(金井氏)。

そもそも株式投資や銀行預金などと比べ、ミドルリスク・ミドルリターンというのが不動産投資の特徴。会社員の属性を生かしローンを利用することで、少ない自己資金でも多くの収益を上げられるレバレッジ効果や、経費計上による節税効果などのメリットがあるのは事実だ。

不動産コンサルティング会社わひこの浅野恵太代表は「不動産投資でうまくいく人は、収入を得て何をしたいかという目的が明確な人。その目的に応じて買う物件も変わってくる」と語る。また、ある不動産投資家は、「私は“投資”でなく、空室を埋める “経営”をしているつもり」と語る。建てて終わりではなく、いかにゴールにたどり着くか。今こそ、その戦略が問われている。

『週刊東洋経済』4月21日号(4月16日発売)の特集は、「不動産サバイバル 大空室時代が来る!」です。
水落 隆博 東洋経済 記者

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みずおち たかひろ / Takahiro Mizuochi

地銀、ノンバンク、リース業界などを担当

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許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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