「漫画村」、接続遮断をしたって死なないワケ 「サイトブロッキング」をしても効果は薄い

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長期的な戦略としては、前回のコラム(ヤバすぎ「漫画村」がそう簡単に消えない事情)で指摘したように”有料で正規のコンテンツを楽しむ”コストと”無料で海賊版コンテンツを楽しむ”コストで、正規版を選ぶ方が良いと思えるよう工夫をしていかねばならないだろう。

しかし、それ以前に緊急の対策を行うのであれば、並行して著作権侵害の幇助に関して、より幅広い解釈が行えるよう法整備を進めるほうがいいのではないだろうか。

著作権を侵害しているコンテンツへリンクを張っても罪には問われないが、侵害を承知した上でリンクを張り続けると、著作権侵害の幇助と判断される可能性があることは、前回の記事で指摘した。善意の第三者とは言えなくなるためだ。

広告サービスの提供元を罰したらどうか

一方、海賊版サイトの運営者はネット広告などを主な収益源にしていた考えられる。多くの場合、それらはサイト運営者が自由に自サイト内に埋め込むことができる。このため基本的には善意の第三者と認められるだろうが、今回のような極めて悪質な権利侵害を引き起こしていると明らかになった後、サイトに対して広告サービスを提供することを”幇助”とみなすよう、法改正なども視野に入れた運用は行えないだろうか。

その上で著作権侵害、侵害の幇助に関して、権利保有者がより簡単に侵害の申し立てを行えるよう手続きを簡素化し、侵害が認められた場合には直ちに関係サービス事業者に連絡した上で、著作権侵害の幇助をやめるよう通知するといった運用を可能にする法改正をしていく方が、実効性のある対策となるだろう。

”幇助”の形はさまざまだ。海外のインターネット広告事業者などからは協力が得にくい可能性もあるが、サイトを直接潰していくのには限界がある。同時に収益源を断っていくほうが効果的だろう。兵糧攻めが効き始めれば、閉鎖・移転を繰り返していくコスト負担が重くなり、それによって海賊版サイト運営を困難にできる。こうした多様なアプローチが必要だろう。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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