土浦「驚きの駅ビル改革」でつくばを越せるか テーマは「自転車」だが走行環境はつくばが上

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しかし、市街地振興策はうまくいかず、2011年にはペルチ土浦の運営からイオンモールが撤退、2013年には「ウララ」の核テナント「イトーヨーカドー」が閉店した。このほかにもホテルの跡地再開発を不動産会社が断念し、駐車場になるなど、いい結果にはつながっていかなかった。

こうした厳しい環境で駅ビル「ペルチ土浦」も苦戦していた。イオンモールの運営撤退後は廉価な飲食店や生鮮食品、生活用品を中心に取り扱う駅ビルとなったが、主な顧客は地域の学生やシニア。2016年度の年商は17億円と、思うようにモノが売れなくなっていた。そこで、2016年3月からは従来の駅ビルとは違う姿を模索し始める。

そして、いままでとは大きく異なる新しいコンセプトとして打ち出したキーワードが「『自転車』と『コト消費』」(アトレ・藤本課長)だった。

駅ビルと茨城県の狙いが一致

「つくば霞ヶ浦りんりんロード」の西側約40kmは筑波鉄道の廃線跡を活用している(筆者撮影)
「つくば霞ヶ浦りんりんロード」には筑波鉄道の駅の遺構も残っている(筆者撮影)

1987年に廃止された筑波鉄道の廃線跡は「りんりんロード」として整備され、激しいアップダウンの少ない快走路として、時折雑誌で取り上げられていた。また、霞ヶ浦の湖岸にもサイクリングロードが整備され、土浦の東と西に大規模なサイクリングコースがあるという状況だった。アトレはそこに目を付けた。

茨城県に駅ビル改装のコンセプトを持ち込むと、県もプロジェクトに加わることとなった。その狙いを、茨城県地域振興課の中村浩副参事はこう語る。「つくば霞ヶ浦りんりんロードはもともと土浦で分断されていたが、2016年11月につなげることができ、180kmのコースができたことで山あり、湖ありとコースの魅力と発信力が高まった。土浦は首都圏からのアクセスを考えると交通の要衝であり、結節点となる。そこにJRからの話もあって、土浦駅にサイクル拠点ができるといいと思い、今回の話に至った」。

アトレのプロジェクトは、全長180kmと日本一の長さを誇るサイクリングコースができるのとほぼ同じタイミングで動いていたのである。そこで茨城県が協働するのは自然な流れであったといえよう。こうして土浦駅ビルにサイクリストの拠点「りんりんスクエア」が整備されることになり、改装後の駅ビルのコンセプトや構成が仕上がっていった。

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