世界一のデジタル銀行は日本と何が違うのか シンガポールDBS銀行CIOに聞く

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私たちは昨年11月、150ものAPIを開示し、50の会社とパートナーシップを組みました。なかでも、インド最大のERP(統合基幹業務システム)プロバイダーであるタリー社との提携は、DBS銀行の事業拡大に大きく寄与しています。今、インドでは800万人の顧客が、決済やファイナンスなどでDBS銀行のサービスを利用しています。

また、インドではスマートフォン専用の銀行サービスも提供しています。「ディジバンク・バイ・DBS」がそれです。スマホで必要情報を入力し、インド国内に600店舗ある提携カフェで本人確認をすれば、簡単に口座開設が完了するというもので、送金や残高照会ができるというものです。

DBS銀行はインドで店舗展開も行っていますが、基本的に法人向けが中心です。でも、これから人口がさらに増加するインドでは、個人向けサービスも拡大していくでしょう。インドのように広い国土を持つ国は、店舗展開が非常に困難ですが、モバイル専門の銀行なら、国土の広さに関係なくビジネスを拡張できます。結果、インド国内では18カ月間で150万の口座を獲得しました。今後、同じことをインドネシアや中国でも展開していく計画です。

「デジタルカスタマー」は上得意客、ROEは27%に

そして、デジタルリードの銀行になるため、カスタマージャーニーを徹底的に考えました。旧来型の銀行ビジネスは、預金や為替、融資といった取引を中心に考えられてきましたが、デジタル化によって顧客のライフスタイルにどう寄り添い、ニーズに対応するかという視点が重視されると思ったのです。

このようにビジネスの発想を転換させるためには、会社のカルチャーを変える必要があります。そのため、最近ではDBS銀行の各部門のリーダーを集め、2日間にわたってデジタルディスラプションとカスタマージャーニーに関する講義を行いました。これを行うことで、カスタマージャーニーを考えるのが、銀行業務にとって当然であるという意識を持ってもらいました。

あるいは、継続的な学びとそのフィードバックを掲げています。たとえば何かを学びたいという社員には、学ぶのに必要なおカネを銀行が提供して、学んでもらっています。ただし、学んだことは銀行に持ち帰ってもらい、それを職場の仲間に教えることが条件です。

では、こうしたデジタル化が収益にとってプラスになったのかどうか。ここは非常に関心の高いところだと思います。結論を言えば、プラスになりました。デジタルを利用していない既存顧客と、デジタルカスタマーで比較すると、デジタルカスタマーは既存顧客に比べてコストが20%下がり、収益は2倍になりました。またROEは19%から27%に向上しています。「ワールド・ベスト・デジタル・バンク2016」に表彰されたのは、私たちのデジタル革命に対する評価だと考えています。私たちが目指すゴールは、他の銀行との競争に打ち勝つことではなく、GANDALFの「D」となり、さまざまなテック企業と対等に戦えるようになることなのです。

鈴木 雅光 JOYnt 代表、金融ジャーナリスト

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すずき・まさみつ / Masamitsu Suzuki

1989年岡三証券入社後、公社債新聞社に転じ、投信業界を中心に取材。2004年独立。出版プロデュースやコンテンツ制作に関わる。著書に『投資信託の不都合な真実』、『「金利」がわかると経済の動きが読めてくる!』等。

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