世界一のデジタル銀行は日本と何が違うのか シンガポールDBS銀行CIOに聞く
デジタル化を推し進めるにあたっては、私たちは「もし、アマゾンドットコムのジェフ・ベゾスが銀行業を行うとしたら、何をするだろうか」という観点から、徹底的に考えました。
そこで出てきた答えのひとつは、私たちが「芯までデジタル企業になる」ことでした。一部のサービスにデジタル化を導入するのではなく、会社自体をデジタル化するのです。そのためには、会社のカルチャーそのものを変える必要がありました。
それと同時に、カスタマージャーニーを徹底的に考えました。カスタマージャーニーとは、顧客がサービスや商品を購入するに至るまでのプロセスのことです。
たとえばフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは、「早く動くためには、安定したインフラが必要だ」と言っています。私たちがデジタル化を目指した2009年当時、DBS銀行のシステムは、不安定でした。そこでデータセンターを増設するのと同時に、インターネットオペレーションを再構築し、2014年までにデジタル銀行になるためのプラットフォームを造ったのです。
「GANDALF(ガンダルフ)」の「D」になろうと決意
2014年以降は、DBS銀行がいかにしてデジタルリードの会社になれるのかを考えました。グーグルやアマゾン、ネットフリックス、アップル、リンクトイン、フェイスブックといった、テック企業になろうと思ったのです。私たちは、GANDALF(ガンダルフ)のDになろうとしました。
GANDALFは、G(Google)、A(amazon)、N(Netflix)、D(DBS銀行)、A(Apple)、L(LinkedIn)、F(Facebook)というように、テック企業の頭文字を並べた造語です。2014年当時、私たちはこのDに入れるほどではありませんでしたが、「そうなろう」という決意を固めたのです。
そのためには、クラウド型のサービス提供と、API(アプリケーションプログラミングインターフェース)を創ることが不可欠でした。アマゾンは2000年当時、大型のレガシーシステムで運営されており、クラウド化されるまでに約6年の歳月を要しました。そこからの快進撃は、周知のとおりです。
なので、私たちも、デジタル化を進めていくためには、クラウドネーティブとして、すべてのシステム、サービスをクラウド化する必要があると考えました。そのうえで、私たちが開発したソフトウエアを公開し、他者とソフトウエアを共有するAPIを推進しました。ちなみに、かつてDBS銀行は、テクノロジーの85%がアウトソーシング、残りがインソーシングでしたが、今ではインソーシングが80%、アウトソーシングが20%というように、両者の比率は逆転しています。
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