米国の関税戦略に「日本封じ込め」の意図あり トランプに対抗し、再び「富国強兵」を目指せ

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第二に、中国との自由貿易によって米国が被った不利益には、安全保障上の問題も含まれる。

冷戦終結後の米国は、中国に自由貿易体制の恩恵を享受させれば、中国が米国主導の国際秩序に挑戦することはなくなるだろうという戦略に立っていた。その背景には、自由貿易は平和をもたらすというリベラリズムの信念があった。米国が中国のWTO加盟を後押ししたのも、このリベラルな戦略ゆえであった。

ところが、中国の戦略は「富国強兵」であった。中国は自由貿易体制に組み込まれた2000年代初頭以降、目覚ましい経済成長を遂げるのと並行して、軍事力を驚異的なスピードで拡大し、東アジアにおけるパワー・バランスを動揺させるに至ったのである。自由貿易によるリベラルな国際秩序の建設という米国の戦略は、中国の富国強兵の前に敗北を喫したのだ。

米国も、さすがに2000年代後半には、「自由貿易による平和」が幻想にすぎなかったと気づいた。前オバマ政権がアジア重視戦略を打ち出したのも、そのためだった。しかし、このアジア重視戦略は、中国の富国強兵を阻止するうえでは、ほとんど何の効果もなかった。

今回の関税措置は、この冷戦終結後の米国の対中戦略の失敗とその反省という脈絡の中に位置づけて、理解すべきなのである。

ただし、米国は、1つ、大きな戦略的ミスを犯している。

米国は、今回の関税措置において、中国に対して特に強硬な姿勢で臨むと同時に、ロシアも適用対象国とした。その結果、米国市場へのアクセスを制限された中国は、ユーラシア大陸の内陸部への進出をより強めるであろう。ロシアもまた、中国への接近を図るであろう。

こうして、トランプの関税措置は、ユーラシア大陸を勢力圏におさめようという中国の「一帯一路」戦略を加速し、強化してしまうのだ。ユーラシア大陸内陸部を勢力圏におさめたら、中国は、今度は南シナ海、そして東シナ海への進出を本格化させるであろう。要するに、日本の安全が危うくなるような地政学的変化が引き起こされるのだ。

日本は報復措置を怖れる必要のない相手

ところで、なぜ米国は、安全保障を理由とする関税措置の適用対象から、同盟国の日本を除外しなかったのか。実は、これは、さほど不思議なことではない。

まず、押さえておかなければならないことは、そもそも日米同盟は、かつてのソ連や現在の中国・北朝鮮に対する封じ込めであると同時に、日本に対する封じ込めとしての性格を併せ持つ「二重の封じ込め」であったということだ。つまり、親米派がどう信じようと、米国にとって日本は、安全保障上の潜在的な脅威の1つに数えられるのだ。

この日米同盟の「日本封じ込め」の側面に着目するならば、米国が安全保障を理由に日本を関税措置の対象としたことは、驚くには当たらない。

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