「自転車を積める列車」で鉄道利用は増えるか ママチャリOKの列車も…混雑時の扱いは課題

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実際、群馬・栃木両県を結んで走る上毛電気鉄道では、毎年4万人ほどのサイクルトレイン利用者がいるという。サイクリストだけでなく、日常の買い物などにも積極的に利用する人が多く、鉄道の利用減少に歯止めをかける役割を果たしているのだ。

ただ、課題が少なくないのも事実。秩父鉄道では、土休日は観光客で混雑することも多いためサイクルトレイン運行区間が短くなっているし、駅施設の関係から利用できない(乗降できない)駅も多い。軽量化されているスポーツタイプの自転車であればともかく、通常のママチャリを担いで階段を昇り降りするのは現実的ではないだろう。サイクルトレイン利用の拡大には、こうしたハード面の課題もクリアしなければならない。もちろん、自転車の持ち込みが増えた際の一般乗客とのトラブルなどへの対策も必要だ。

地方鉄道を救うツールになるか

実は、今春に廃止されたJR三江線でもかつて自転車の持ち込みを可能にする提案がされたことがあった。2009年、沿線自治体による三江線改良利用促進期成同盟会が自転車の持ち込み制限緩和を要望したが、JRサイドからは「臨時便なら対応できる」との返答だったという。

小さいディーゼルカー1両で運転されていた三江線だからやむをえない面もあるし、当時はまだサイクルトレインへの理解は進んでいなかった時代だから、JR側の対応も当然だろう。とは言え、”二次交通”という弱点を抱えている鉄道にとって、サイクルトレインが持つ可能性は小さくないはずだ。

サイクリストたちが集まるきっかけとなり、さらに地元住民たちも日常の買い物などで積極的に自転車を列車に持ち込んで利用する――。さまざまな課題はあるにせよ、もしかするとサイクルトレインは、地方鉄道を救うひとつのツールになるかもしれない。「B.B.BASE」の活躍が、こうした議論のきっかけになることを期待したい。

鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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