日経平均がGWに2万2700円前後まで戻る理由 相場は案外、皆が思っている方向と逆に行く

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なぜかと言うと、10万枚の売りのポジションを保有している人の大部分がさらなる円安で恩恵を受けるためには、さらに10万枚以上の新規の売り圧力が発生して円安が進まない限り、先に売りポジションを持った売り方は身動きがとれません。

でも、いずれ時間が経つにつれ、あきらめて退散してしまう。そうなると、少しの円売り圧力が加わるだけで円安方向に振れやすくなるという理屈です。「日柄調整」とよくいいますが、まさにそのメカニズムです。

ですので、足元もドル高円安に向かいやすい環境が整ったといえます。材料待ちの状況にあるわけですが、そのポイントは6日に発表されるアメリカの3月雇用統計とみています。

前回の2月分では、非農業部門雇用者数が市場予想を上回る強い結果となった一方、2月の株価急落の引き金となった賃金の伸びが市場予想を下回る伸びにとどまったことで、安心感が広がりました。当日のダウ平均は前日比で440ドル程度の上昇幅となったのですが、そのあとまもなく調整に入った経緯があります。結局のところ、賃金の伸びが抑えられたからといって、株価は上がらないわけです。

足元は当時よりも株式市場の不安定さが増しており、指標結果の悪い解釈に過剰反応する可能性が高い点には注意が必要です。もちろん結果はどうなるかはわかりません。しかし、ここからの円安・日本株のリバウンドがあるとすれば、その前後が最初のタイミングになるとみています。

日経平均は5月に「戻り高値」2万2700円前後も?

2日に発表された、3月調査の日銀短観では大企業製造業のDIは24と前回12月(26)から低下しましたが、年初からの市場混乱のわりには、思った以上に景況感は悪化していません。少なくとも筆者はそう感じ、売られ過ぎで安値圏にある主力株は、いったん戻るのではないかとみています。

短観によると、事業計画の前提為替レートは12月調査の時点(2017年度は1ドル=110.18円)から若干円高方向の同109.66円でした。3月のドル円は1ドル=105円台後半が中心になっていたため、もう少し円高方向を見ているかと思ったのですが、意外感もありました。

いよいよ上場企業は4月後半からの決算発表で、2018年度の業績見通しを示します。市場をがっかりさせるような見通しにはならなければ、ガイダンス・リスク(利益予想の発表によるリスク)を見越して売りポジションを持った短期筋の買い戻しが入ってくる可能性が高いと思われます。

なにせ、見方によれば今期(2018年度)は減益になるのではないかといわれる水準まで株価は売られているため、為替市場が円安方向に動いていることを条件に、日経平均株価は短期筋による先物への買い戻しによって、ゴールデンウィーク(GW)前後に2万2700円程度の戻り高値を付けにいくと予想します。

アメリカの景気に一部でピークアウト感が強まることで、再び円高・株安局面が6月~7月に向けて到来すると思いますが、筆者が今年みていた下値メド(昨年6月高値2万0318円)を3月で達成したため、戻り高値を付けたあとの下押し局面では底割れはない、と思っています。

東野 幸利 国際テクニカルアナリスト

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ひがしの ゆきとし / Yukitoshi Higashino

DZHフィナンシャルリサーチ 日本株情報部長。証券会社情報部、大手信託銀行トレーダー、大手銀行などの勤務を経て2006年に入社。マーケット分析やデリバティブ市場のコンテンツを担当。IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)教育委員、日本テクニカルアナリスト協会理事なども務める。
 

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