まず、すでに採用されている技術に「SoundTrue」がある。車種はポルシェのハイサルーンセダン「パナメーラ」。今のデジタル音源の多くは圧縮されており、オリジナル音源からは若干質が落ちている。それをオリジナル音源に限りなく近づけて奏でる技術だ。
かなり静粛性が高いなど車内音にこだわるモデルでなければその効果は気づきにくいかもしれないが、将来は後に述べる技術により微差な音の変化も体感しやすくなるうえに、ラジオからの音もオリジナル音源に近づけるなど、可能性が広がっている。
実用化直前の技術「ClearVoice」
そのような音のチューニングに長けるBOSEの真髄と表現したい実用化直前の技術に「ClearVoice」がある。ヘッドレストスピーカーを活用するこの技術には正直驚かされた。結果から言うと、音楽が鳴る車内でも、とてもクリアな声での電話通話が可能になるからだ。
仕組みは、4つの車内マイクで拾った肉声を含めた音から、車内に流れるオーディオ音源のデータ分を取り除く。残るのは会話に必要な声だけ。当然、通話の相手には車内に流れるオーディオ音は聞こえず、クリアな声が届くので、会話しやすい。この技術の可能性は無限で、演算処理速度の高いCPUが必要になるが、車外騒音をリアルタイムでデータ解析できれば、走行音がうるさいトンネルのような環境でも通話の相手には自分の声しか届けずに済む。
実はこの技術のさらなる利点が、音声認識レベルが飛躍的に高まること。いま音声認識自体での誤認識はとても少なくなっている。それは携帯電話などを介してコネクテッドされた環境であれば、語り口調でさえも認識できるレベルを確保できる。
それでも誤認識は起きるのだが、その多くがノイズと声が混在すること。クルマであれば音声入力の際には自動でオーディオがオフになるなど、声だけをクリアに拾おうとしているが、ClearVoiceがあれば、そんな必要もなくなる。
また、ミニバンなどでは移動中に後席の子供は映画を見ているなど、同乗者がヘッドホンを乗車中に着ける使用環境が増えてきた。それは同時に会話ができない、呼びかけに反応しない寂しい状況を生み出していたが、個別の指定したヘッドホンとだけ会話ができるなどの「CarWear」技術も研究が進んでいる。もちろんここにも先ほどのClearVoice技術が使われ、クリアな会話が楽しめる。
個人的には、家族での移動で各自がヘッドホンを着けてクルマに乗るような時代など絶対に嫌だと思うたちだが、将来はイヤホンを着けずにヘッドレストに埋め込んだ指向性の強いスピーカーで自分だけの音を聞ける「VolumeZone」も実用化される予定だ。
このように音を制御する技術も進んでおり、今回紹介した4つの技術すべてが相まって導入されたら、車内環境は今とは大きく変わる。
ちなみに将来実現しようとしている先行開発領域のヒューマンインターフェース技術は、声さえも使わず思うだけでモノやコトとついにつながれる、脳とのコネクテッドだ。この分野も取材でき次第、レポートしていこう。
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