新幹線高速化「3分短縮」は意外なほど大変だ 新型「N700S」に至るスピードアップの歴史
2007年に登場した700系のモデルチェンジ車N700系は「次世代新幹線」電車として、営業最高時速300kmでの運転が可能な車両となった。前述したカーブなどの影響により東海道新幹線内の最高速度は時速270kmに抑えられたが、従来の700系が多くのカーブ区間では乗客にかかる遠心力が強くなることから最高速度を時速255kmに制限されていたのに対し、N700系はカーブで車体を内側に傾ける車体傾斜機構を取り付けたことによって、カーブでも270kmでの走行が可能になった。
さらに、その後登場した改良型のN700Aは、これまで立ちふさがっていた最高時速270kmの壁を打ち破り、最高時速285kmへの引き上げを可能にした。
285kmでの運転初日となった2015年2月25日、東京発12時23分発の特別列車9285A列車は報道陣と一般試乗客を乗せて発車した。9は臨時の列車の意味、285は最高速度を表す粋な列車番号が付けられ、JR東海の時速15kmアップに対するこだわりが込められた列車番号だった。車内で、JR東海の巣山芳樹新幹線鉄道事業本部長(当時)が運転台から時速285km走行を得意げに告げると、夢の超特急世代の筆者には万感胸に迫るものがあった。
技術の積み重ねで実現した時間短縮
「のぞみ」運行開始当初、最速で2時間30分だった東京―新大阪間の所要時間は、N700系の登場によって2時間25分に、さらにN700Aによる最高速度引き上げで最速2時間22分まで短縮された。これは早朝・深夜の列車だったが、今年春のダイヤ改正からは日中も2時間30分から3分短縮し、2時間27分で走る列車が登場した。たった数分と言うことなかれ、この時間短縮は東海道新幹線の堅実な技術開発の歴史が培った結果なのだ。
このような経過を経て、2018年春にはさらに進化した次世代新幹線電車N700Sが加わることになったのである。この電車は営業運転用の量産車よりひと足早く「確認試験車」として新技術の検証などを行っており、今後は試運転などで走る姿を見ることも増えるだろう。そしてオリンピックイヤーとなる2020年には、営業列車の仲間にN700Sが加わることになる。
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