新幹線高速化「3分短縮」は意外なほど大変だ 新型「N700S」に至るスピードアップの歴史

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快走する0系(筆者撮影)

東海道新幹線は開業直後、東京―大阪(新大阪)間を超特急「ひかり」が4時間で結んだ。1965年11月から「ひかり」は3時間10分の運転を実現している。最高時速は210kmで、これは1986年に220kmに引き上げられるまで変わらなかった。車両も100系が登場した1985年までは0系の1車種のみだった。

大きな変化が起きたのは、1987年に国鉄が分割民営化され、東海道新幹線がJR東海の路線となってからだ。1992年3月14日のダイヤ改正で、フルモデルチェンジ車の300系が投入されるとともに「のぞみ」の運転が始まった。国鉄時代には「新幹線の最高速度はせいぜい時速250kmまで、それ以上は浮上式鉄道(リニア)に頼るほかない」というのが多くの鉄道関係者の話だったが、鉄道技術の進歩によって270km走行が可能になったのである。

時速270km時代の幕開け

「のぞみ」の営業運転開始に先立つ1992年3月9日には300系の公式試乗会が行われ、午前5時59分に東京を出発した列車は、最高時速270kmで暁の東海道新幹線を疾走した。

「のぞみ」試乗列車に乗車した元国鉄技師長の島秀雄氏(左)と須田寛氏(筆者撮影)

この列車には当時のJR東海・須田寛社長と共に「新幹線を作った男」として知られる元国鉄技師長の島秀雄さんが乗車され「270km/hですか……新幹線も速くなったものです」と語っていたのが今も印象に残っている。300系「のぞみ」により、東京―新大阪間は2時間30分と大幅に所要時間を短縮した。

0系(左)とすれ違う300系(筆者撮影)

300系の次に登場したのが4代目新幹線電車700系で、フルモデルチェンジの大胆な流線形は「カモノハシ」といわれ大人気となった。しかし、最高速度は300系と同様時速270kmのままであった。車両性能としてはすでに300km対応可能だったが、東海道新幹線の開業以来の軌道とカーブなどの影響でスピードアップが思うようにならなかったこともある。

このさらなるスピードアップは東海道新幹線の大きな課題として立ちふさがり、さまざまなメンテナンスが施されてきた。線路の保守、保全や路盤、路床の強化整備などが行われ、同時にさらに高速対応の新幹線電車の開発も進められた。

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