「東京ゲームショウ2008」開幕 新世代機ハード普及進み、ゲームソフトの競争本番へ
今年で12年目を迎える家庭用ゲーム業界最大のイベント、「東京ゲームショウ2008」(主催:社団法人コンピュータエンターテインメント協会<CESA>、会場:幕張メッセ)が開幕した。10月9、10日のビジネスデイに続き11、12日は一般公開される。
ゲームの最大の需要期である年末年始商戦を前に、ソニーやマイクロソフトといったハードメーカー(任天堂は例年出展せず)、ゲームソフト各社の新戦略、重点商品がお披露目される場として、また新作(開発中も含む)に対するユーザーの反応が生で確かめられる場として、国内の業者や関連メディア、ユーザーはもちろん、海外からの注目も高いイベントだ。今年の出展社数は過去最大だった昨年の217社をやや下回る209社。出展タイトル数は昨年の702本を上回る879本となった。事務局の目標では、4日間で18万人の参加を予定している。
ゲームショウ初日のオープニングイベント「TGSフォーラム2008」の基調講演を中心にレポートする。
「世界は日本のゲームメーカーに何を求めるのか」
フォーラムの口火を切ったのは、スクウェア・エニックス社長でCESA会長の和田洋一氏による基調講演、題して「日本ゲーム産業新世代 世界は日本のゲームメーカーに何を求めるのか」。
世界をリードしてきたと自他ともに認める日本のゲーム業界だが、任天堂のようなソフト供給力を持つハードメーカーは別として、ソフト専業メーカー各社の世界市場での存在感は以前ほど高くない。欧米市場の拡大に伴って相対的に力をつけた欧米企業(たとえば、Ubisoft、アクティビジョン、EAなど)との格差は広がる一方だ。その根本的な原因について、主に産業構造の変化の面から問題提起し、現状打破するための危機感を共有しようとしたのが和田氏の講演だった。
和田氏によれば、「日本が再び世界をリードするためには、産業をネットワーク型にしなければならない」という。日本のゲームソフト業界は、ハードメーカーが国内企業に限られていたこともあって、国内で完結する緊密なコミュニティが存在していた。だが、マイクロソフトのゲーム機への参入や、海外市場の広がりとともに、国内にあったコミュニティのハブは海外へ分散した。国内は閉じられた世界で独自の発展を遂げる一方、海外は、英語圏を中心に、コンピュータサイエンス、映画・映像産業などの人材や資源を巻き込むようにして重層的なコミュニティを作り上げてきている。そうした動きに対抗するためには、日本のゲーム業界も、ハード会社とソフト会社、大企業と下請け、といったヒエラルキー型の構造から、異業種・産学取り混ぜたネットワーク型の構造に変革していく必要がある。
では、「ゲーム産業をネットワーク構造にするために何を克服すべきか」。「ネットワーク」と一言で言っても、例えば、ゲーム開発レベルのネットワークといえば、開発会社どうしの横のつながり、分業といった意味で使われる。ビジネス展開で使えば、インフラ面の話や異業種とのメディアミックスなど、その意味するところは広く混乱を招きやすい。まず、その混乱を取り去る必要がある。心理的抵抗も克服すべき対象となる。「ゼロから作り出さないとクリエイティブとはいえない」といった、日本のゲーム業界にありがちな思考から抜け出す必要がある、ということだ。また、著作権問題など制度上の不整合も障害であり、より現実的なレベルでは、インターフェースの標準化といった実務面での困難さも予期される問題だという。
そうした様々な障害を乗り越える必要があるわけだが、「どこから手をつけるか」といえば、まずは危機の本質を自覚すること。そして「できるところからすべて着手する」というのが和田氏の結論。単純ではあるが、いわんとするところは、とにかく動き出すことが重要だということだろう。
「今ならまだ間に合うが、日本に残されている時間はあまり長くない。早く手を打たないと世界に取り残されてしまう」--和田氏は講演をそう締め括った。