クルマが家電になっておカネを稼ぎ始める日 「所有」する時代は過去のものになるかも

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クルマを含むデジタル化の潮流の大きな特徴は、「最大化」ではなく「最適化」の実現、つまり、使えるモノを増やしていくのではなく、今あるモノの最大限の活用へと向かう点にある。その好例が、デジタルマッチングを活用したシェアリングビジネスだ。Airbnbは個人が保有する居住用資産の稼働率を高め、ウーバーは自家用だけで利用している自動車に他人を乗せて収益を稼ぎ出す。

日本では、クルマを持たない若者が増加している。筆者はある企業のセッションで、若者のクルマ生活を支援するスキームの構築を支援したことがある。ある企業のチームでリーダークラスの男性が「自分のクルマで女性を自宅まで迎えに行くのが普通じゃないか」と話したのに対して、若手メンバーの男性は「時間とおカネのムダ。待ち合わせ先までは電車で行けばよい」と主張した。もはや所有することのステータス性よりも、時間の使い方という体験価値を最大化することが重要なのだ。

市場の主導権がより若い世代に移るにつれて、必要なときに対価を払って移動手段を利用する方法の普及は進む。自動車や自転車のレンタルやシェアリングなどの仕組みは、今後も対象を広げ、整備が進むだろう。

自立的に送迎するだけでなくおカネを稼ぐ未来のクルマ

自動運転、電気自動車、シェアリングなどが普及した社会で、それらを組み合わせたクルマの利用の仕方は、今後どうなるのだろうか。著名なフューチャリストであるブレット・キングは著書『拡張の世紀』の中で、そのシナリオを描き出している。キングの描く2025~2030年の世界では、自動運転車の所有権が分散され、利用時間がレンタルされている。もう少し詳しく見てみよう。

ある人が自動車利用サービスを契約して、クルマをシェアし、毎日一定時間クルマを利用する権利を購入したとしよう。クルマは、通勤利用を予約したオーナーをピックアップして職場まで乗せていく。

目的地でオーナーを降ろしたクルマは、次に別のオーナーを拾って指定場所に送り届ける。そこでクルマは充電が必要と判断し、充電ステーション付の駐車場へと向かう。クルマは駐車場に直接連絡をとり、駐車スペースと購入電力の金額を交渉する。

駐車場の充電ステーションは個人投資家向けに売却/リースされている。クルマが充電したエネルギー量は、クルマと充電ステーション間で直接決済される。その後クルマは、次のオーナーの利用までの時間があると判断すれば、自らウーバーにログインしてタクシーとして機能し、運賃を稼いで蓄える。

これが、キングが考える未来のクルマだ。

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