クルマが家電になっておカネを稼ぎ始める日 「所有」する時代は過去のものになるかも
このシナリオでは、自動運転車と充電ステーションが相互に資金決済している。そのためには、クルマに銀行口座を持たせればよいだろうか? 現在のバンキングの仕組みで自動運転車の利用に関する決済を行うためには、オーナーグループの代表者名入りの口座を作成することになる。銀行口座はヒトの利用を前提としていて、反社会的利用に対抗するために、口座開設や利用に際して本人確認が必要になるからだ。ヒトではない口座として法人口座もあるが、その場合も厳格な法人の存在証明を要する。
ところが、将来このヒトの利用を前提とした仕組みが十分機能しなくなることはすぐに想像できる。シェアリングエコノミーが普及すれば、そうした口座の種類と数が膨大になることは自明であり、またオーナーも頻繁に変わる可能性が高いからだ。
一方で私たちはすでに、ポイントやプリペイドカードなど、銀行口座以外のさまざまな「価値貯蔵」手段を有している。同じように考えれば、自動運転車や充電ステーションの価値貯蔵は、必ずしも銀行口座である必要はなさそうだ。むしろ、何かワレットのようなものを設定してデジタル通貨的なもので決済し、ブロックチェーン的なもので所有権や資金の移動を追跡・記録するほうが適切かもしれない。
ゆでガエル化に注意
つまり、自動運転その他の新しいトレンドが普及すると、おカネまでを含んだクルマの利用の仕方が根本的に変わるとみられるのだ。デジタル化が進んだ経済では、こうした方向への変化が早く起こって、かつ急速に普及することは十分考えられる。
「リープフロッグ現象」という言葉を耳にされたことはあるだろうか。先進国では、時代とともに発達したテクノロジーが積み重なったインフラの上に新しいテクノロジーが開花してきたが、新興国ではその積み重ねがないため、途中段階をカエルのように飛び越して最先端のテクノロジーがいきなり採用され、急速に普及することを指す。アフリカや中国でモバイル決済が爆発的に普及し、先進国を上回る水準になっているのがその例だ。
逆に、積み上げ型で発展してきた先進国は、新しいテクノロジーの採用・普及に後れをとるリスクがある。築き上げてきたインフラとデリバリーの仕組みはそれなりに便利であり、さらに法規制の網などに守られていれば、外部の環境変化への感度も鈍りがちだ。周囲の国々が「カエル跳び」的に進化していくのに取り残されて、気がつくと自国の企業/業界/制度が丸ごと「ゆでガエル」化してしまわないように、デジタル・ディスラプションに対応していく必要がある。
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