子どもがしっかり眠るには「暗闇」が必要だ 少なくとも寝る1時間前には光を避けたい

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これまでは就学前の子どもを対象にした研究は行われていなかったが、子どもたちの体内時計はより敏感であると考えられるだけの十分な理由があった。

「研究では、家庭で子どもたちを寝かせるときに起こることを再現しようとした」と言うのは、論文の上級執筆者でコロラド大学ボルダー校の准教授(統合生理学)で睡眠と成長に関する研究室を率いるモニーク・ルブルジョアだ。

光にさらされるとメラトニンが抑制される

ベッド入りたがらない子どもは、暗い寝室から出て電気のついた部屋にいる親のところにやってきて、光にさらされる。「わずかな時間でも光にさらされるとメラトニンが抑制され、睡眠を促進する効果が停止する」とルブルジョアは言う。

研究に参加した子どもの就寝時間の平均は午後8時27分で、干渉する光を浴びない「洞窟」の中では平均で午後7時47分にメラトニンの分泌が始まり、「生物学的な夜」が始まっていた。

翌日の夜、子どもたちがライトテーブルの上で遊んだ場合は、「明るい光を浴びたことでメラトニンの分泌が約90%抑制され、暗い光の中に戻った後もその影響が続いた」とアカセムは言う。光が消えてから50分がたった後も、大半の子どもたちはメラトニンのレベルが前日の50%にも満たなかったという。

メラトニンの分泌は通常、日中は少なく、夜になると増えて体内時計が眠りへの準備をする。メラトニンが分泌されるのは脳の左右の半球の間に位置する松果体だ。松果体は体内時計の中枢である視床下部の視交叉上核とつながっており、視交叉上核には網膜がとらえた光の信号が届けられる。

「目の水晶体は就学前の子どものほうがはるかにクリアだ」とアカセムは言う。「瞳孔がより大きいため網膜がより多くの光をとらえ、より強い信号を体内時計に送る」

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