シンパで固めたトランプ政権の暴走が始まる いよいよ真のトランプ劇場が稼働

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トランプ大統領の直感がそのまま政策に反映される状況は、2017年1月のトランプ政権発足直後に似ている。当時のトランプ政権では、政権内の統率がとれないまま、バノン前首席戦略官が主導する形で、大統領権限による移民・難民の入国制限等が推し進められた。しかし、即興で進められた政策には不備が多く、入国制限等は裁判所によって差し止められてしまう。次第に政権運営が行き詰まるなかで、政権内の統率を立て直す役割を担ってきたのが、2017年7月に就任したケリー首席補佐官だった。

当時と現在では、決定的な違いがある。就任直後に過激な政策が推進されたのは主に移民問題であり、外交政策や経済政策に関しては、トランプ大統領の直感を制御する仕組みがあった。コーン前国家経済会議委員長やティラーソン前長官などのビジネス界出身者や、マクマスター前補佐官などの軍人経験者には、特に外交政策や経済政策において、「米国第一主義」を緩和させる役割が期待されていた。

「米国第一主義」は加速するのか

実際に、1年目のトランプ政権においては、イランとの核合意の破棄や、保護主義的な通商政策の本格化といった論争的な公約の実現は、何とか瀬戸際で押しとどめられていた。

しかし、一連の人事刷新により、そうした制御機能は著しく弱体化。「米国第一主義」を緩和する役割は、政権外に求められることになる。それは有権者や産業界であり、それらの意向を受けた議会の対応である。

外交政策では、「米国第一主義」の捉え方が問われそうだ。ポンペオ国務長官やボルトン補佐官は、軍事行動をも視野に入れたタカ派的な言動で知られる。しかし、トランプ大統領には、2016年の大統領選挙において、イラク戦争を厳しく批判してきた経緯がある。選挙戦当時の「米国第一主義」には孤立主義的な側面が強かったわけであり、トランプ大統領が軍事力行使に傾斜するようだと、熱心なトランプ支持者が反発しかねない。

経済政策では、保護主義的な通商政策に対して、米国の産業界や議会共和党の反発が見込まれる。特に注目されるのが、議会の反応である。トランプ大統領は、2018年11月に投開票が行われる議会中間選挙に向けて、保護主義的な主張を強めると言われる。しかし、中間選挙への影響だけを考えれば、必ずしも保護主義は共和党のためにならないからだ。

確かに保護主義は、「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」と言われる中西部などの地域では、トランプ大統領の熱心な支持者に歓迎されるかもしれない。しかし、中間選挙で共和党が勝たなければならない選挙区は、全米に散らばっている。農業が盛んな地域を地盤にするなど、自由貿易を支持してきた共和党議員も多い。実際に、ポール・ライアン下院議長等の議会共和党の指導部は、総じて保護主義への傾斜に懸念を示している。

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