職業寿命が短い「夜の女性」の深すぎる苦悩 辞められない・貯まらないという大問題

拡大
縮小

稼げているうちは良いのですが、歳をとればいつ稼げなくなるかわかりません。角間さんは、いざ稼げなくなったときに、「性風俗から昼の仕事へのシフト」がスムーズにいかないことを危惧しています。

風俗嬢に引退はない?

風俗を辞められないという状況は、店を辞められないという話ではありません。実は、一度業界を去っても、また戻ってくることが多いのは、性風俗業界の特徴のひとつです。

「貯金ができたからと辞める人がいるけれど、基本的にすぐ戻ってくるんですよ。資格に飛びつく人もいるけれど、やはり戻ってくる」

こう語るのは、GAPの角間さん。ソープ嬢リエさんも、いわゆる“出戻り”についてこう話します。

「友達は、結婚して子ども産んで、また戻って来た。旦那はいるけど、旦那の給料じゃ生活できないからって」

年齢層が高い風俗嬢はいわゆる「熟女」店で働くことがありますが、そのほとんどはこれまでに性風俗で働いたことのある人という調査もあります。

ホワイトハンズの坂爪さんは、著書『性風俗のいびつな現場』(筑摩書房)で、40代以上の熟女専門を売りにした、とある風俗店の面接にやってくる女性たちのうち、8割以上が業界経験者であると明かしています。何らかのきっかけで業界に戻ってきた女性や、他店で売れなくなった風俗嬢が、「熟女」を売りにした店に流入してくるケースが多いのです。

性風俗業界に詳しいノンフィクション作家の吉岡優一郎さんは、「(性風俗業界に)戻っても何百万も稼げると思ってしまう」と心境を分析しています。

ノンフィクション作家の吉岡優一郎さん。これまでに300人以上の風俗嬢にインタビューをしています(写真:吉岡さん提供)

「引退ってないんでしょうね、風俗ってね。プロレスラーも一度やめてもまた戻ってくる。風俗嬢とプロレスラーは引退はないというのが持論」

元風俗嬢で作家の酒井あゆみさんは、『売春論』(河出書房新社)の中で、風俗嬢について「麻薬性がある職業だと思います」と述べています。

次ページ「そもそも辞めるという概念がない」
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT