ダイソン新コードレス掃除機の凄すぎる機能 基本構造から見直してフルモデルチェンジ

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なぜなら、掃除できる時間=バッテリー駆動時間が短ければ意味がないからだ。軽量化するだけならば、重量物であるバッテリーを削減すればよいが、実はバッテリーセルは6個から7個へと増加しているのだ。軽量化はモーターやインペラーの改良、本体構造の見直し、ヘッドの小型軽量化などで達成している。

その結果、より効率的なモーターとインペラーを組み合わせることで、最低1時間、実質的には電力管理を細かく行うことで、1時間を超える使用時間を実現した。充電なしに連続して1時間以上掃除をする機会はそうそうあるものではない。

先に挙げた改良点の中でも、本体構造の見直しは、なぜこれまで、これをやれなかったのか?と疑問に思うほど合理的なレイアウトになっている。

吸入路は完全にストレートで、モーターで吸い込んだ空気はサイクロンによってゴミが分離され、分離後の空気だけをフィルター部に送り込む。この際、従来機はモーター、インペラーなどを迂回するネジ曲がった流路を通って排気されていたが、Cyclone V10ではモーターとインペラーの小型化によって、完全にストレートな吸排気の流路を確保している。

「ゴミ捨て」も改良された

さらに、製品本体の構造をシンプルにしたこのストレート構造が、集塵してクリアビンにたまったゴミを捨てる際の体験を大きく向上させている。ダイソン製にかぎらず、小型掃除機はゴミ捨ての体験を高めることがなかなか難しい。使い捨ての集塵バッグなら簡単だが、ゴミを吸うごとに集塵力は落ちていく。

ところが、Cyclone V10はゴミを吸った後も吸引力が変化しないことに加え、ゴミ捨ても極めて簡単なのだ。取り外した本体部をゴミ箱に向け、ごみ捨てのボタンを押してクリアビンを奥に押し込めば、簡単に、しかもゴミが飛び散ることなく捨てることができる。

発表会で説明を行った創業者のサー・ジェームズ・ダイソン氏(筆者撮影)

これらの改良はいずれも長足の進化であるだけでなく、掃除機を使うユーザーならば、誰もがより進化してほしいと思っていた掃除機の本質部分だ。

ダイソンによれば、4年前に商品コンセプトが決まり、有線のキャニスター型掃除機が不要になる製品を作る目標を立て、3年の開発期間を経て今回の製品発表に至っているという。その間、ダイソンも改良は続けていたが、必ずしも劇的な体験の変化はなかったが、ダイソンは安易に“新機能”を求めず、その裏側で本質部分を高める努力を重ねた。

その結果として得たアドバンテージ、いや何よりもブランドへの力は、決して小さなものではない。闇雲に褒めることはしたくないが、そろそろ次の手はないのでは?と思っていたら、これだけの傑作を発表した。

成熟した製品ジャンル、従来製品でも実現できている高い顧客満足。そうした状況でも、“本質部分”に働きかけることで驚きを引き出せることをダイソンは示した。発表会の最後には、高齢化が進む日本でもっとも評価が高く売れている他社製コード付きキャニスター型掃除機と”集塵レース”を実施。そして、”完勝”してみせた。

”コードレスは便利だが集塵性能は低い””つねにバッテリーを気にしなければならない”――そんな旧来の常識は、早晩、忘れ去られることになるだろう。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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