原油価格が「1バレル75ドル超」になる理由 今は膠着状態だが、年央以降に上昇も?
また、シェール生産地域でのDUC(水圧破砕前の掘削済み井戸)の増加が意味することを理解することも必要だ。DUCは生産量が急増しているパーミアン地区で増加しているが、これは原油相場が上昇すれば、いつでも生産が可能であることを意味する。しかし、産油量は伸びているものの、DUCも増加しているということは、産油量のさらなる増加には原油相場の上昇が不可欠であるということである。
原油相場が1バレル=70ドルに近づく際には、産油量は増えていくだろう。しかし、それも来年以降になれば、その水準が産油量の維持のための最低水準になるはずである。このように、生産サイドの状況を見ていけば、現在の1バレル=60ドルをわずかに超える原油価格の水準は、生産者にとっては持続可能ではないことがわかる。この点は心理面ではなく、実態面からの下支え要因であり、今後も60ドルは岩盤のように固いサポート水準となろう。
世界の需要は拡大、気になるサウジ―イランの動向
需要面に目を向けると、IEAは3月の石油市場月報で、2018年の世界石油需要見通しを日量9930万バレルに引き上げた。2017年は同9780万バレルであり、日量150万バレル増加することになる。一方、経済協力開発機構(OECD)加盟国の原油在庫は1月には28億7100万バレルと、7カ月ぶりに増加となり、5年間の平均を5300万バレル上回った。
IEAは、OPEC(石油輸出国機構)以外の産油国の供給が2018年に日量180万バレル増加し、全体で同5990万バレルに達すると予想している。これでいくと、今年末まで世界の石油在庫は確実に減少することになる。ただし、第1四半期では、供給の増加ペースは需要を上回り、在庫は増加する見通しだ。これを嫌気して、原油相場は上値が重くなりそうだ。それでも4月に入れば北半球でのガソリン需要の増加を背景に、在庫は減少に向かい、原油相場は再び上向くだろう。
これら以外の点で注目しているのは、サウジアラビアの動向である。ここへきて、国営石油会社であるサウジ・アラムコの海外上場延期の観測記事も出ている。難航しているとの話も有力だが、筆者は原油相場がそれなりに回復したことで、以前に比べれば資金的に余裕が出てきたことも、背景にあるのではないかと考えられる。いまのところは、上場延期となっても、それが原油相場に影響を与えることはないだろう。
また、同国のムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、「イランが核兵器を開発すれば、サウジも核兵器を持つ」と発言し、最近のイランの動きを牽制している。イランの動きが加速するようだと、敵対関係に拍車がかかる可能性がある。
一方、米国では、国務長官だった国際協調派のレックス・ティラーソン氏が突然解任されるなど、イランへの強硬姿勢を強める可能性が指摘されている。ムハンマド皇太子は米国を訪問しドナルド・トランプ大統領と会談したが、今後イランに対する制裁などの動きが材料視される可能性もある。
こうした地政学的リスクが高まることで、市場がこれらを意識すれば、少なからず原油相場の下支え要因となりそうだ。これらから考えると、原油相場の下落リスクはかなり低下しているように思われる。一方で原油市場が抱える生産サイドの構造的な問題が将来的に原油相場を押し上げる要因となり、1バレル=60ドルを下値に、年央から年末にかけて75ドル超を目指す展開になるものと思われる。
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