ウーバーが起こした死亡事故の重大すぎる罪 実験中の完全自動運転車が歩行者をはねた
自動車メーカーもレベル4とレベル5の実用化に向けた基礎研究は行っているが、昨年中盤あたりまでは実用化に向けた動きに対して消極的だった。だが、昨年後半以降に入ってから状況は変化しており、独フォルクスワーゲンのMOIA(モイヤ)、日産とDeNAのイージーライド、そしてトヨタのe-パレットなど、2020年代前半の実用化を目指すとの発表が相次いでいる。
パーソナルカーとサービスカーは、ハードウエアやソフトウエア、また道路側のインフラ整備について大きな差はない。
車載のセンサーは、単眼カメラ、ステレオ(複眼)カメラ、ミリ波レーダー、レーザーレーダー(通称ライダー)、赤外線センサーなどで、走行目的や量産における購買コストによって、数と種類でさまざまな組み合わせがある。それぞれのセンサーの精度や小型・軽量化については各領域の専門企業における開発が進んでいるが、現状でもかなり高い精度が得られていると、自動車メーカー関係者の多くは見ている。
また、位置情報については、アメリカのGPS、ロシアのグロナス、中国の北斗(ベイドゥ)などのGNSS(衛星位置測定)を基本として、日本ではこれらと日本独自の準天頂衛星を併用する。さらに、高精度三次元地図については、独Here(ヒア)、オランダのTomTom(トムトム)、そして日本が産学官連携で進めるダイナミックマップとの連携が進む。
さらに、車どうしの通信である車車間通信(V2V)や、車と道路インフラとの通信である路車間通信(V2I)、さらに車と歩行者との通信である歩車間通信(V2P)についても徐々に整備が進んでいる。
ハードウエアの技術に加えて、自動運転技術のキモとされるのが、人工知能(AI)だ。この領域の主役は、画像認識における演算を行う半導体産業で、米エヌビディアや米インテルなどがしのぎを削っている。
リアルワールドで起きた重大事件
こうした自動運転の技術開発が進む中で、最も重要なことは「リアルワールド」におけるデータ収集だ。そのため、今回事故を起こしたウーバーをはじめ、自動車メーカーや大手自動車部品メーカーは世界各地で公道における実証試験を行っているのだ。
当然、未完成の技術を公の場でテストするのだから、実験実施者のリスクは大きい。そのために、各国の当局は自動運転実証試験におけるガイドラインを示し、その中で「万が一の場合に備える」ことを重視してきた。
ところが今回、実証試験においてはあってはならぬ、歩行者をはねて死亡させるという事故が起こった。事故の調査は今後進むが、当局も自動車関係者も、そしてこれから自動運転に参入しようとしているグーグルやアップルなどのITジャイアンツとしても、事故が起こったという事実を重く、深刻に受け止めなければならない。
走行が夜間だったのでセンサーの検知精度が甘かったとか、歩行者が予期せぬ方向からいきなり現れたといった言い訳は一切通用しない。
リアルワールドでの実証とはいえ、まさかワーストシナリオが起こってしまうとは、ウーバーのみならず、世界の自動車産業関係者はまったく予想していなかったことだ。
今回の事故、いや事件は、自動運転サービスカーの実用化の時期を大幅に遅らせることになる可能性が高い。それだけではなく、自動運転パーソナルカーにおける安全基準についても大幅な見直しが求められるだろう。
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