大丸松坂屋が「保育園運営」に本気で挑むワケ 「英語」を軸にした300人超の大規模園を展開

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J.フロントが小規模ではなく大型園を志向する理由は明快だ。「大規模な園でないとビジネスとして成り立たない」(JFRこどもみらいの加藤篤史社長)。

J.フロントリテイリングの保育園事業を担う、JFRこどもみらいの加藤篤史社長(撮影:今井康一)

1つの保育園で年間売上高約6億円を想定しているが、土地や建物を購入するとなると数億円規模の投資が必要になり、さらに運営費用などもかさむことになる。今2018年2月期は純利益285億円を見込むJ.フロントにとって、保育園運営を将来の収益源に育てるためには、一定規模の園児数を集め、同時に複数の保育園を運営して規模の利益を追求することが必要というわけだ。

特徴は、規模だけではない。J.フロントの保育園は教育に重点を置く。認可外保育施設のため、基本的には行政の補助金を受けることができないかわりに、サービス内容や保育料などは自由に設定できる。

グローバル人材を育てる保育園

J.フロントは拓人こども未来のノウハウやカリキュラムを活用し、「英語」「運動」「知育」を3本柱にして運営する構えだ。「グローバルで活躍できる人材を輩出できるように、思考力を持った子供を育てていきたい」と、加藤社長は意気込む。

J.フロントリテイリングの提携先、拓人こども未来が東京・三鷹で運営するキッズ・デュオ・インターナショナルのバイリンガル保育園(写真:J.フロントリテイリング)

新規事業の育成に本腰を入れる同社だが、保育園運営となるとこれまで培ってきた百貨店事業とは違うノウハウが求められる。特に、保育料(授業料)としては月額約10万円と高めの想定をしていることもあり、思惑通り数多くの園児を集められるかが、勝敗のポイントになるだろう。

900万人の顧客情報を持つJ.フロントだが、その強みを園児の確保に生かすことができるか。園児だけでなく優秀な先生を確保することができるのか。

また、実際の運営はフランチャイズ形式をとるため、保育園の屋号の命名権はJ.フロント側にない。ブランド力のある大丸松坂屋の名前をそこに盛り込むことができるか。新事業を定着させるためには、乗り越えなければならない課題は少なくない。

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