佐川氏は、森友学園に便宜が図られたこともなく「適正だった」とか、学園との交渉の記録は「廃棄した」とか、事前の価格交渉も否定する、といった答弁をしていた。佐川氏が(誰が指示したかを不問として)財務省をかばうためにこうした答弁をしたとは考えられない。
もしも、安倍晋三首相夫妻をかばって、こうした答弁をしたならばどうか。そうみると、文書書き換えで財務省の信頼に傷がついたからといって、消費増税を3度延期するとは言えない可能性がある。むしろ、財務省が安倍首相夫妻をかばい続けることと引き換えに、(財務省のやりたい)消費増税を予定どおり行うことさえ、ありうる。
財務省はもう書き換え前の文書を取り繕えないわけで、財務省の協力なしに、安倍首相夫妻が不利になる情報を隠すのは難しくなった。残された方法は真正な決裁文書の文言の解釈で、どう解釈するかは作成した当の財務省次第だ。
消費増税が3度延期される可能性も
とはいえ、財務省内での書き換えによって、安倍政権自体が消費増税を予定どおり実行できないほど弱体化すれば、消費増税は3度延期される可能性が残る。
安倍政権がどこまで弱体化するかは、今後の政局次第だろう。麻生太郎副総理兼財務大臣には、決裁文書の書き換えで監督責任を問う声があがる。麻生財務相自身は文書書き換えには関与していないと説明している。安倍首相も12日に、全容を解明するために調査を進める責任を麻生財務相には果たしてもらいたい、と辞任は必要ないとの認識を示している。
ただし、もし与党内で責任論が拡大して麻生財務相が引責辞任に追い込まれたら、どうなるか。その辞任で幕引きができればともかく、それでも森友問題が収束しないかぎり、国会での追及は麻生財務相がいなければ、安倍首相に矛先が直接向かうことになる。誰も安倍首相をかばえる閣僚がいなくなってしまう。
ましてや、もし麻生氏が閣外に去れば、自民党内のパワーバランスに大きな変化をもたらし、今年9月の自民党総裁選挙の行方にも影響を及ぼすかもしれない。
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