文書改ざんは「尻尾切り」で済む問題ではない 当面は麻生氏の去就が焦点、安倍3選も赤信号

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そうした状況を踏まえ、永田町では安倍政権の存続の可否も絡めた今後の政局展開について、「3つのパターン」が取りざたされている。それは、(1)国会を麻生財務相続投で乗り切り、9月の総裁選で首相が3選を果たす、(2)国会中に麻生財務相が辞任し、国会閉幕後に首相が総裁選不出馬を表明する。(3)疑惑の幕引きに失敗し、働き方改革法案なども廃案となり、国会閉幕後に首相が退陣表明する、との3パターンだ。

もちろん、自民党内の権力闘争の構図の変化や野党の出方、さらには大阪地検の捜査などの「変数」次第ではあるが、これまでのところ永田町でも、首相にとっての最悪シナリオとなる(3)の「任期途中の退陣表明」説は極めて少数だ。衆参両院で与党が圧倒的多数という状況下では、国会攻防の末の首相退陣はほとんどあり得ないからだ。

しかし、(1)の首相の3選による続投と、(2)の総裁選不出馬表明については、永田町専門家の予測が分かれている。(1)のパターンのように、既定路線に沿って首相が3選を果たしても、「森友疑惑がなおつきまとえば政権の体力が奪われ、改憲論議も進まないまま2019年夏の参院選自民敗北で退陣の危機を迎えるのは避けられない」(自民長老)との予測が、(2)の「3選不出馬」説に現実味を与えているからだ。

「まさか」の事態、「奢れる人も久しからず」

政治論でみれば、現在の首相にとって、「いつまでも疑惑を引きずったまま続投し、悲願の憲法改正にもたどり着かないまま参院選敗北で退陣するよりは、潔く総裁選不出馬を決断してキングメーカーとしての影響力を維持する」(首相経験者)ほうが、「名宰相としての引き際にふさわしい」(首相経験者)とみえる。

もちろん、燃え盛る「森友政局」を夏までに収束させ、得意の外交攻勢で内閣支持率の急落も防げれば、「3選」後の1強政権も維持できるが、「現在の混乱が続く限り、その可能性は日増しに小さくなる」(同)ことは避けられそうもない。

自民党内で「政局運営のプロ」と呼ばれる二階幹事長は12日、首相の3選については「微動だにしない」と語った。しかし、変幻自在で権謀術数を駆使する二階氏の言葉を額面通り受け止める向きは少ない。

その一方で、総裁選出馬を明言する石破茂元幹事長のライバルとして出方が注目される岸田文雄政調会長は、今回の森友政局の急展開について「政局(が変わること)への期待など、もともと考えていない」と苦笑しながらも「(総裁選に)出られないだけ、といわれないように、今は力を蓄えておくことが大事」と地方行脚に力を入れる。これに併せて、岸田派も党内各派との会合を頻繁に行い、情報交換に余念がない。自民党内でも「これまでの首相3選が当たり前というムードは一変した。これからは遭遇戦だ」(無派閥有力議員)との声が広がる。

2007年9月12日に、安倍首相(第1次政権)が突然退陣表明した際、事実上の後継指名で安倍政権を誕生させた小泉純一郎元首相は「人生には3つの坂がある 『のぼり坂』『くだり坂』 そして『まさか』だ」と語った。今回の「森友政局」は、文字通り首相にとっての「まさか」の事態だ。しかし、その背景には5年を超える政権運営で生じた「1強政権の歪み」があることも否定できない。今、永田町では一部のベテラン議員が「奢れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」という平家物語の一節を口ずさみ始めている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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