雪を吹き飛ばす「除雪車両」の奥深い世界 信越エリアに1~2駅ごとに計29台配備

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昼過ぎ、岩原スキー場前駅にはすでにMCRが待機していた。車内に乗り込むやいなや、エンジンのうなり声とともにゆっくりと走り出した。小走りくらいの速さまで達すると、運転席正面でポンプがガタガタと震え始め、勢いよく雪を吐き出し始めた。

走行中のMCR。車体前方のローラーで線路上の雪を取り込み、真上のポンプから線路外へと雪を吐き出す(写真:東鉄工業)
勢いよく噴射された雪は、放物線を描いて線路外へと飛んでいく(記者撮影)

MCRは運転手、除雪機の操縦手、そして周囲の見張りや外部との連絡役の3人体制が基本だ。車体正面には回転するローラーが付いており、車内のモニターからぐるぐると回るローラーが雪を巻き込んでいく様子が見て取れる。

これで線路上に積もった雪をかかえ込み、上部に装着したポンプで線路外へと吐き出す。雪は2~3メートル先まで飛んでいくが、線路沿いに点在する民家や道路標識に衝突しないよう、ポンプの向きを変えたり出力を調節したりしながら進んでいく。まさに職人技だ。

除雪だけなら、雪を飛ばさず脇に寄せるだけでよいのでは、と思ったが、そういうわけにもいかないようだ。「押しのけた雪が線路の両脇でだんだん壁状に積まれていき、雪が車両を取り囲む形になる」(新潟支店越後湯沢出張所の山田隆一所長)ためだ。そのため、時おり線路上の雪だけでなく、線路脇に積もった雪をローラーの左右を囲むアタッチメントで剥ぎ取っていく。

走る列車が雪を飛ばすことも

除雪車は事前にJR東日本に提出した運行スケジュールに沿って走る。岩原スキー場前を通過する列車の本数は多くないが、隣の越後湯沢駅からは運行本数が増えてダイヤが混雑し、除雪車が入り込む時間的余裕がなくなる。そのため、基本的に日中の除雪は行わず、終電から始発の間に最大2往復ほど一気に除雪を行う。真夜中でなおかつ吹雪での除雪は、とりわけ緊張する場面だという。

電車が頻繁に走っていれば、走る車両が線路に積もった雪を吹き飛ばしてくれる。だが2015年に沿線を走っていた特急「はくたか」が廃止され、猛スピードで雪を飛ばす車両がなくなった結果、除雪車の役割はますます重要になった。

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