雪を吹き飛ばす「除雪車両」の奥深い世界 信越エリアに1~2駅ごとに計29台配備

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「雪が降る前に準備をし、降ってきた雪をいかに迎えるかが大切。雪が降ってから対応していては間に合わない」(山田所長)。作業所には毎日天気予報が送られ、つねに降雪情報に気を配る。緊急時には日中でもENRを一気に走らせ、列車が立ち往生しない程度に雪を線路脇に寄せるという。

越後湯沢駅前のENR。前方の排雪板で雪を線路脇に押し進める(記者撮影)

それでも対応できず、本格的な除雪が必要だと判断して初めて、運行ダイヤを変更して、「列車を間引く」という選択肢が浮上する。そこでも、1次、2次、3次と電車を間引く段階が定められているそうだ。

自然現象の予測は難しい。ここまで万全の態勢を敷いていても、昨年12月上旬から今年2月中旬までで、管轄エリア内では雪の影響で列車が24回も停車した。加えて、今年は降雪が少ないとみられていた地域が豪雪に見舞われた。信越線が立ち往生した場所もその一つで、一帯はこれまで降雪があまり多くなく、配備している除雪車の台数も少なかった。

除雪車はすぐには出動できない

除雪車の出動ダイヤ。塩沢―越後湯沢は頻繁に列車が通過するため、除雪車が入り込む余地がない(記者撮影)

除雪車の準備ができても、すぐさま出動することはできない。前述のとおり、除雪車の運行スケジュールは普通列車や貨物列車などの運行スケジュールを加味して決められており、いきなり線路閉鎖をすることは容易ではないのだ。

また現場の安全確認などにも時間を要するため、立ち往生してから正式に出動要請がかかるまではタイムラグが発生する。加えて通常時速5kmほどのスピードが、大雪を押しのけるには時速2km程度にまで落ちるため、現場に急行するにも時間がかかってしまう。

降り積もった雪はゴールデンウィークごろまで残っているという。厳しい寒さが続く中、定時運行を懸けた自然との戦いはしばらく続きそうだ。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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