学校で週2回も発砲事件が起きる国のリアル 米国で銃規制に反対する人たちの言い分は?

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保守派が多く住むような州では、銃の携帯は「常識」というような人もいるが、それでも義理母は少し極端だと思う。しかしその極端な義理母が、現在「銃を持たねばならない世の中自体を変える活動」を始めたというのを聞いて、驚いてしまった。

彼女は現在ワシントン州の刑務所に、定期的にボランティアにいって読書指導などを行っているのだが、凶悪犯などとも日々触れ合う中で、「これさえなければ、世の中はよくなる」と思うことに気づいたらしい。彼女曰く、刑に服している犯罪者たちの多くは、「あるもの」から凶悪なアイデアを得ているというのだ。その考えを友人たち数人にしたところ、「そのとおりだ」と共感を呼び、近く活動を本格的にスタートするのだという。

銃より危険なのはハリウッド

その驚きの活動というのは「暴力映画製作をハリウッドに廃止させる運動」なのだそうだ。ゲーム会社などに対しても銃を使うような設定のゲーム制作をやめるよう、働きかけるつもりらしい。即効性はないだろうが、10年、20年、暴力映画やゲームに触れることを人々がやめれば、多くの人の頭の中から銃乱射などの犯罪につながるコンセプト自体が消える、というのが彼女の主張だ。彼女はこう語る。

「リベラルの人たちが大好きなハリウッドが、そもそも諸悪の根源なのよ。映画による洗脳ほどの狂気は存在しない。銃より危険なのはハリウッド。あとはゲーム会社も恥を知るべきね。こんな世の中に生きている以上、いますぐ銃を規制するのは間違っているし、その廃止を訴える中心がハリウッドの人たちだなんて、とても滑稽でしかない」

「『銃反対』と聖人顔をしながら銃犯罪が生まれることに加担し続けている人たちが、暴力シーンのある番組や映画、ゲーム制作を完全にやめるのであれば、そのうち銃を持たないでいい時代が来るかもしれない。そうなったら私だって銃を持ち歩くのはやめるわよ」

なんとも驚く持論であるが、確かにそういう考えもあるとも思えてしまう。彼女は「その日」が来るまでは、銃は必要悪と語る。そして私にもつねにそれを持つことを勧め続けるのだろう。彼女のこのアドバイスに背き続けてはや10年が経った。この会話が、義理母との間でなされることがなくなる日は、やってくるのだろうか。

ジュンコ・グッドイヤー Agentic LLC代表、Generativity Lab代表

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Junko Goodyear

アメリカ在住。青山学院大学卒業。日本にて約20年の企業経営のち、現職。日本企業のアメリカ進出、アメリカ企業の日本進出のコンサルテーション&サポートほかを行っている。シアトル近郊最大の子供劇団のひとつ『Kitsap Children’s Musical Theatre』顧問を務めながら、次世代継承と・社会還元共有型マーケティングを考える『ジェネラティビティ・ラボ』も主宰している。

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