暴走「中国」との関係に苦慮する米国の憂鬱 イデオロギーの違いが再び顕著化
2014年に、指導者と政府系報道機関の発言を通じ、中国は米国との「新型の大国関係」への欲望を表現し始めた。この大胆で、あいまいに定義された野心は、中国がグローバルな役割を再認識し始めたという最初の兆候の1つだった。結局、中国はこのぎこちない言いまわしを使うことをさらっとあきらめた。それにもかかわらず、新しい種類の米中関係が実際に出現し始めた。
ここ数十年間、共通の利益を追求するために作られてきた関係は、異なる世界観によってますます定義される関係に戻っているように思える。中国は内部の政治的意見の不一致への圧力を強めており、米国は中国の海外への影響に対し、不安を膨らませてきている。イデオロギーは再び米国と中国の関係を特徴付けている。
中国に進出した米大学に「共産党団体」設立
ドナルド・トランプの米大統領選挙での勝利を、あらゆる世界的な傾向の「変曲点」として指摘することが流行りとなっている。しかし、この場合、変化は米国よりも中国の指導者による部分が大きい。2012年に総書記に就任して以来、習近平は、毛沢東以降いかなる党指導者よりも強いイデオロギーを貫いてきた。
中国共産党(CPC)の圧力を受け、チャットとSNSアプリ「WeChat」は、サービス内の私的な会話に現れる中国の「ゆがんだ」歴史を検閲することに合意した。このアプリの世界的な利用範囲を考えると、この決定は中国の国境をはるかに超えている。
中国のイデオロギー統制への新たな動きは、中国で運営する外国の大学の新規則にも現れている。学問の自由を約束されて中国に上陸したニューヨーク大学やデューク大学などの機関は、今やキャンパス内に共産党団体を作ることを強いられ、党当局にハイレベルの意思決定権限を譲っている。先月には中国が、顧客調査の1つに台湾を独立国として挙げたマリオット・ホテル・グループに公式の謝罪を要求。中国の反応は激しいもので、マリオットはそれに対し謝罪した。
イデオロギーを海外に広げようとする中国の試みは、米国に対するもののみではないが、米国はより強く反応するようになった。トランプは、1月下旬、中国の「不公平な」貿易慣行に対応して、中国のソーラーパネルと洗濯機に対する大幅な関税引き上げを発表した。関税はその目的を達成するかどうかはわからないが、その象徴的意義は大きい。米国は、世界貿易体制を支える開放性にかかわる費用を、もはや負担するつもりはないということを示している。