スズキ「クロスビー」が絶対に避けたい蹉跌 ハスラーに似ても派生名にしなかったワケ

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セパレートの前席(筆者撮影)

シートにはハスラーで採用したパイピングの内側に、同色のアクセントを入れた。カラーパネルがハスラーの3色に対して1色、パイピングが5色に対して3色と選択肢が少ないのは、販売台数の違いが影響しているのだろう。

ちなみに広さについては、ボディサイドをあまり絞り込んでいないためもあり、幅の広さはしっかり感じる。前席をセパレートタイプにしたのも余裕の表れだろう。一方、後席の前後方向は、スライドを最後方にセットすると身長170cmの筆者なら楽に足が組めるが、これはハスラーも同じである。

5:5分割の後席(筆者撮影)

気になったのはこの後席が3人掛けなのに、分割がハスラーと同じ5:5であること。中央に座るとヒンジのパーツの上に座ることになって快適ではないし、ヘッドレストはない。ここは早急にスイフトのような6:4分割に作り直してほしい。

高速道路の余裕は軽自動車とは別世界だ

クロスビーのエンジンは1L直列3気筒ターボで、6速トルコン式ATを組み合わせる。ソリオやイグニスが積む、価格や燃費で有利な1.2L直列4気筒自然吸気とCVTのコンビにしなかったのは、ハスラーとの性能差を明確にするとともに、付加価値で勝負する車種としたという位置づけゆえかもしれない。

車両重量はハスラーのターボ付き4WDより130kgほど重いが、軽量化を得意とするスズキだけあって1000kgを下回る。対する最高出力と最大トルクは排気量の違いを反映して、どちらもハスラーの約1.5倍になる。

市街地ではそこまでの力強さは感じないが、高速道路の余裕は軽自動車とは別世界だ。100km/hのエンジン回転数は約2000rpmに過ぎず、ロードノイズも抑えられていて、静かなクルージングが味わえた。

さらに違うのは乗り心地とハンドリングだ。全幅が約200mm広いために、クロスビーはサスペンションをさほど固めなくても安定感が得られる。おかげで乗り心地は快適。ソリオやイグニスよりも上に感じた。それでいてコーナーは腰高感がなく安心してクリアできる。

高速道路や山道を多く走行するユーザーなら、ハスラーよりもクロスビーのほうがふさわしいと感じるだろう。

それだけに気になるのは海外展開だ。現状クロスビーは国内専用となっているが、軽自動車枠とは関係なく作られているうえに、水平基調でスクエアなスタイリングは欧州のユーザーには新鮮に映りそうであり、アジアのユーザーに対しては日本の最新トレンドの提案としてアピールできる。

最低地上高は180mmを確保し、グリップコントロールやヒルディセントコントロールも設定しているので、ジムニーほどではないものの走破性も評価されるだろう。1Lターボと6速ATというパワートレインもグローバル展開に向いている。

日本のみならず世界でどう評価されるのかも気になる1台である。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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