相鉄の新型車両は「西武、東武」直通に対応? ユニークな前面グリルは「機関車」がモチーフ

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厚木操車場では外観撮影。改めて、編成を通して眺めることとなった。YOKOHAMA NEVYBLUEは日本語に置き換えれば濃紺。艶のある車体が周囲の光景を反映する。ラッピングを施すという案もあったが塗料のもつ深みにはかなわないとの理由で塗装が選ばれた。柔らかい輝きは、パール顔料を配合した多重層反射の効果である。

一方、当日は雨も降り出しそうな曇り空だった。晴天の場合は深い青が強調されるはずだが、明るい色とは異なり曇天だと黒く沈んだように見える。果たして、この色が新しいブランド色として提案された際、社内でも論議を呼んだそうだ。しかし若い社員の間では評判がよかったため採用に踏み切った。今後の相鉄沿線に住んでほしいと願う年齢層だからであろう。シックであることを重視して、あえて帯などは入れていない。

そしてまた、フロントマスクが注目される。切れ長のライトケースとともに、自動車のようなグリルに関心が集まっていた。しかし、じつは空気孔の機能は持っておらず、造形として構体の一部を彫り込んだものである。

前面グリルのデザインは「機関車」がベース

デザインブランドアッププロジェクトに参画した「くまモン」の生みの親、クリエイティブディレクター水野学氏の育った地が茅ヶ崎であり、東海道本線を疾駆するブルートレインを身近に見ていた。車両のデザインに携わることになり、「そう言えばあの機関車にはグリルがあった」という思い出から、インスパイアされたのだと言う。よもや相鉄20000系が、国鉄最強のEF66形電気機関車と結び付くとは、驚きの秘話である。

今までにない車両を目指して「横浜らしさのある顔」が検討された。緩やかな曲面ガラスにグリル状の造形で大きな特徴を出している(撮影:杉山 慧)

もう一点、この先頭部でとくに鉄道誌カメラマンの話題となっていたのが、LEDの種別・行先表示器だった。何の気遣いもなく撮影すると、通電する電気の周波数の関係から文字が欠けてしまうのがLED表示器である。きれいに文字を写すにはなるべくスローシャッターを切る必要があるが、それは高速走行する列車を撮影する術とは相反する。そこでカメラマンの間では、何分の一のシャッター速度であれば大丈夫かが重要な調査項目となる。相鉄20000系の表示器は1/1000でも文字切れすることなく写った。

じつは相鉄では、以前に導入した車両での事態が問題になったと言う。自社の最大商品である車両が、アピールすべき沿線の地名も読み取れない不完全な状態で大勢の目の前に出てしまう。それを避けることから今回は判読性に優れ、結果的に高速シャッターに耐える装置を選択した。高性能のぶんは価格に反映する。しかし、これから最大限に売り込んでゆく車両、そして路線なので、強いこだわりをもって採用した。

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