相鉄の新型車両は「西武、東武」直通に対応? ユニークな前面グリルは「機関車」がモチーフ
新形式車両20000系は東急線との直通用車両である。運行が3年も早く予定されているJR直通用の車両ではなく、東急用を先に新造したのは、以下の理由による。
高度成長期に沿線人口が急増した相鉄ではラッシュ輸送改善のため、車両限界を国鉄と同等に拡大したこと、また近年は、車両更新や車両管理を効率的に行うため、JR東日本のE231系、E233系をベースとした車両を導入している。したがって仕様も操作性もJR車両と共通部分が多い。それに対して東急の車両は、車体の最大幅が20cmも狭いなど車両規格が異なり、機器の配置や方式、操作性もさまざまに異なるため、相鉄サイドにおいては馴染みが薄い。そうした条件から、試験や訓練を重ねなければならないという事情がある。
そのため、既存の7000系の代替用車両として10両1編成を先行して新造した。当面は自社線内の運行に供し、次は新たにJR直通用車両2編成の新造を挟み、その後に第2編成以降を増備する計画となった。
安心・安全・エレガント
一方、20000系の仕様は、相鉄のデザインブランドアッププロジェクトに基づいて決められた。この事業は、相鉄グループ100年の節目に「これまでの100年を礎に、これからの100年を創る、Thinking of the next century」のキーワードの下、駅・車両・制服を統一性のあるものとしてブランド力を高める。鉄道としての「安全・安心」にエレガントを加えて、沿線のゆたかな生活を訴求するというもの。この方針に則り、新たな車体色にYOKOHAMA NAVYBLUEが定められ、その第一弾として2016年4月に新塗色を採用したのが9000系リニューアル車。その車内もシックに改められ、編成中の一部に設けられたクロスシート座席では、表地に本革を採用した。この20000系は、そうしたコンセプトによる初の新造車である。
メーカーは日立製作所で、統一された素材や工法で質の高い車両を効率的に作る、同社標準車両のA-trainを採用した。このためアルミ合金ダブルスキン構体で、その接合にはFSW(摩擦攪拌接合)を用い、滑らかな車体となる。前頭部は横浜の進化を表現するべく、デザイナー、メーカーと共同して立体的でインパクトの強い形状とした。デジタル技術を駆使するとともに、実際の製造段階では特徴的な部分に“匠の技”も用いている。
こうした概要説明をかしわ台駅隣接の車両センターの棟内で受けた後、実際の車両のお披露目。そのあと試乗を兼ねた車内撮影となり、車両センターから出区して、かしわ台駅から厚木操車場へ向かった。厚木操車場は、海老名駅手前の信号場で分岐し、JR相模線厚木駅に連絡する貨物線上の車両留置基地で、JR線経由での車両輸送の経路ともなっている。かしわ台駅で発車を待つ編成の種別行先表示には、「試運転」の文字と一緒に、相鉄のキャラクター「そうにゃん」が鮮やかに浮かび上がっていた。
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