仮想通貨大国ニッポンのあまりにお寒い現状 監視が強化されてもはびこる無登録業者

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金融庁によると、仮想通貨交換業として無登録であるほかの14社に対しても、「違法の恐れがある」など照会手続きをしているという。

昨年4月の改正資金決済法施行を受け、金融庁は9月に仮想通貨業者の登録制を開始した。騒動のさなかにいるコインチェックは登録申請中で、「みなし業者」の扱いだった。しかし、無登録の業者は「みなし業者」ですらない。

今回、金融庁が照会状を送った業者の中には、中国系のBINANCE(バイナンス)が含まれている可能性がある。同社は取引規模で世界最大級の仮想通貨取引所だが、日本では登録業者ではない。

にもかかわらず、一時日本語で情報を載せていたほか、現在も日本向けを含めたアフィリエイトプログラムを展開している。アフィリエイトに関しては、その報酬の厚遇ぶりが話題になっていた。バイナンスは取り扱い仮想通貨の種類が極端に多いという特徴もあって、口座を開設した日本人ユーザーが多い。

仮想通貨交換業の登録を得ている国内取引所からは、「無登録営業は大問題。金融庁は早くバイナンスを取り締まるべきだ」と指摘する声が上がっている。金融庁が同社を問題視していても不思議ではない。このほかロシア系のYoBit(ヨービット)、香港系のKuCoinなども無登録で日本向けの営業活動を行っているとして、取引所関係者の間で話題になっている。

フィリピンの国家プロジェクト?

照会状の送付など金融庁も努力していると思われるが、残念ながら監視の目は行き届いていないのが実状だ。

ブロックチェーンラボへの警告書発出が発表された、まさにその日。LINEを通じて「NOAH(ノア)コイン」というトークンの最終販売が行われていた。この最終販売で約1億ドルを集めたとされている。

NOAHコインの最終販売を行うサイト(記者撮影)

昨年1月から募集が順次開始されたノアコインは、フィリピンの都市開発を伴うもので、「政財官民が一体となって取り組んでいるプロジェクト」「国家プロジェクト」と喧伝されていた。ところが昨年3月、在日フィリピン大使館が「ノアコインを国家プロジェクトとして承認していない」とサイトで通知。これにより一部返金を迫られることになった、いわくつきのトークンである。

販売を行っていたサイト上には、「ノアコインはすでに上場が決定しています」と明記されており、同トークンは法律上の仮想通貨に当たると考えられる。販売業者のNoah Global innovation Services Limited(英領ヴァージン諸島)は、日本の仮想通貨交換業の登録を得てもいない。なお、このノアコインでも、ブロックチェーンラボの男性講師のようにマーケティングを主導している日本人男性がいる。

政府は仮想通貨について「イノベーションの促進と利用者保護のバランスに留意して、必要な取り組みを進める」というスタンスをとる。世界におけるビットコイン取引のうち約半分を日本円建てが占めており、確かに日本は「仮想通貨大国」といってふさわしい。しかし無登録業者の跋扈(ばっこ)をみると、その内実はあまりにもお寒い。

緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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