「年金は70歳から」と決めると計算が楽になる 「老後に必要なおカネ」を簡単に考える方法

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

たとえば、妻が年下の場合と、子どもが小さい場合です。厚生年金には加給年金という家族手当があり、夫が65歳時点で18歳未満の子どもがいる場合あるいは年下の妻に対して「加給年金」という家族手当が支給されるのです。これが、年金支給の繰り下げをしている期間は支給が止まってしまうので、該当する人は、慎重に考える必要があります。

また、子どもに対する加給年金は夫が65歳の時に18歳未満の子なのでそれほど多くはないと思いますが、年下の妻については年間約38万円の上乗せ年金です。妻との年齢差が大きくなればなるほど、繰り下げ受給のデメリットは大きくなりますから、この場合は、繰り下げをしないほうがむしろ家計としてはメリットが大きいこともあります。

しかし年下の妻であったとしても妻自身が厚生年金に20年以上加入していると、加給年金の対象から外れてしまいます。したがって、夫婦共働きであれば加給年金がそもそもないので、繰り下げ受給を検討するほうが長生きに対してのメリットは大きくなります。

シングルの人も、繰り下げを優先的に検討すべき

一方、シングルの人も、繰り下げは優先的に検討すべきでしょう。特に長生きするとして、とりたてて世話になれる家族がいないという場合には、できるだけ繰り下げを前提として、老後の生活設計をするほうが安心を得ることにつながります。

年金の繰り下げについてお話しすると、よくこういう質問をされます。「70歳まで繰り下げをしても71歳で亡くなればそれで年金は終わりますよね、それって損ですよね」。確かにそのとおりなのですが、公助である老齢年金は「長生き」を支えるもの。また年金の役割は、障害を負った人の生活保障である障害年金や家族を失った人の生活保障である遺族年金もあることを考えると、損得で単純に語られるべきものではないと思うのです。

生活の不安は誰もが抱えています。老後の不安もしかりです。しかし、ネガティブなことばかり考えても前に進みません。公助と自助の役割分担を明確にし、国に守ってもらう部分は国にお願いし、自助努力する部分は自身でしっかり確保できるように現実的な計画を立てるほうが安心です。老後のためのひとつの考え方として、参考にしていただけると幸いです。

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー、FP相談ねっと代表

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまなか のぶえ / Nobue Yamanaka

FP相談ねっと代表。一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。アメリカ・オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。「楽しい・分かりやすい・やる気になる」ビジネスパーソンのためのライフプラン相談、講演を数多く手掛ける。大手新聞社主催のiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAセミナーの講師など登壇も多数。金融庁のサイトで、有識者コラムを連載。著書に『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、『100人以下の会社のためのiDeCo&企業型DC楽々活用法』(日本法令)ほか。公式サイト

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事