北朝鮮は制裁下でもインフレになっていない 4年滞在したスイス援助機関職員がみた現実

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フィスラー:いくつかのシンクタンクがそれらの額を試算していることは知っています。しかし、それらはあいまいで、試算することはとても難しい。

もっと関連性があって興味深いことは、平壌の家庭が月にユーロやドル換算でどれほどの額を使うことができるのか、キャッシュフローを追うことです。これこそが興味深い数字で、国民の富について重要なことを物語るものです。同じことが地方でも当てはまります。

例を挙げます。以前、道路で止まっていると、若い男性が歩いて近寄ってきて、野生の朝鮮人参の根を売ろうとしました。野生の朝鮮人参は最高級品ですので、平壌では約300ドルの価値があります。しかし、この男性は平壌には行くことができない。それで彼はそこで100ドルで売っている。道路沿いでそれを買った人は誰でも、平壌に運んでいき、2倍か3倍の価格で売っています。ですので、この若い男性とその家族の購買力はこの瞬間、100ドルになります。

北朝鮮の地方にあるソーラーパネル施設(写真:フィスラー氏提供)

地方の村の60%の家庭が電力向けのソーラーパネルを持っていると言っていいでしょう。その設置料金は、大きさにもよりますが、最低150ドル、最大300ドルから400ドルになると思います。ですので、人々は150ドルの何かを買うことのできるキャッシュを入手できているに違いありません。

なるほど、確かにソーラーパネルは毎月買わないかもしれません。しかし、一度だけのソーラーパネルを買います。それから、100ドルに及ぶ携帯電話なども買っています。

北朝鮮の人々に外の世界を知る道をつくるべき

NKニュース:国際社会と北朝鮮との関係を俯瞰してみて、対北朝鮮外交で欠けているものは何ですか。

フィスラー:あらゆる形のコミュニケーションを断つことは、逆効果になると思います。対話を維持し、意見を交換し、両者が互いの内部の状況に出入りできるようにすることは、外交の核心だと思います。

このことは、両者ともに当てはまりますが、北朝鮮の人々が海外に旅行し、見ることができるものや見たいものを見せなければならないことを意味します。そして、そうした外交チャンネルを切断することは、おそらく間違った方法でしょう。

どのような変革や変化もそれが起きるのは、人々が外部で何が起きているのかをよりよく知っている場合に限られると私は思います。 そして、非常にぎりぎりのレベルでは、外部の世界を知らせる機会を提供することも、私たちの職務です。

私が誰かを壁に向かって押せば押すほど、その人は合法的ではない手段を用いて、より必死になって行動するでしょう。また、もし制裁が彼らを窒息させる水準にまで達した場合、彼らは不法な行動に移るでしょう。

高橋 浩祐 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

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たかはし こうすけ / Kosuke Takahashi

米外交・安全保障専門オンライン誌『ディプロマット』東京特派員。英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』前特派員。1993年3月慶応義塾大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターなどを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務めた経験を持つ。

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