北朝鮮は制裁下でもインフレになっていない

4年滞在したスイス援助機関職員がみた現実

NKニュース:そのような地域の人々はどのようにして生活しているのですか。

フィスラー:彼らは概して、政府から何ももらえないとの事実に基づいて、非常に上手に対処するのに長けています。政府から施しが受けられないのは、不運ですが、現実はそうなっています。

地方での製麺作業(写真:フィスラー氏提供)

NKニュース:北朝鮮の人々の生活でいちばん驚いたことは何でしょうか。

フィスラー:人々の政府に対する絶対的な忠誠心の高さです。彼らはシステムを信じています。

彼らは決して外国人居住者に忠実ではありません。このことは、私たちが北朝鮮の真実を知っているのか、100%確信できないという状況をもたらしています。

秘密裏で行われていることをどれだけわかっていたのか、そして、それはどれほどオープンにされていたのか。1人の外国人として、その判断がいちばん難しいことです。

印象的な言葉があります。「ちょっと待て。本当はどうであるか、あなたに言うから」。私は旧体制のミャンマーに滞在していました。そこでは自分のスタッフや従業員、さらにはコミュニティでの一定の状況が存在していました。警備され、誘導され、その時はつねに監視下に置かれていました。しかし、車の後部座席に座っている瞬間になれば、現地のスタッフは「私に説明させてください。あれはこれこれこうで、理由や目的、取材などはこうです」と言うでしょう。そして、物事の全体像を理解できます。

こうしたことが北朝鮮では不可能です。私たちが何を見て、何を理解できるのか、北朝鮮の検閲は強力です。

北朝鮮に人道支援を行っている理由

NKニュース:北朝鮮は特別なケースで、政府が多大な検閲を行い、情報をコントロールし、人権侵害をしていることから人道支援を行うべきではないと主張する意見もあります。政府が核ミサイル開発に金をつぎ込み、国民を食べさせていないなか、なぜ支援しなければならないのか。

フィスラー:まずいくつかの数字を明確にさせてください。現在北朝鮮への人道支援の総額は年間4500万ドルから5000万ドルの範囲で、最大でもおそらく6000万ドルほどです。この数字自体は実際、重要ではありません。これは年間1人当たり2ドルから3ドルで、平均値としてみれば何でもありません。ただ、本当に援助が必要な人々に支援を集中できれば、大きな違いを生みます。状況を改善することができるのです。

ちなみに、スイスの北朝鮮への人道支援額が年間1000万ドルから1200万ドルで、全体の約20%を占めております。2国間では最大のドナー(贈与者)です。

援助機関の存在や私たちの職務をモニターし、実行できる能力によって、初めて援助を必要とする人々にきちんと届いているかが保証されることになります。4年間の勤務後、このことは本当に真実だと結論づけることができます。

ですので、政府が国民をまったく無視し、核開発にばかり資金を費やしている国を私たちが支援しているという指摘は、かなり単純化しすぎています。

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