北朝鮮は制裁下でもインフレになっていない 4年滞在したスイス援助機関職員がみた現実
フィスラー:冷蔵庫などを売っている、彼らがショッピングモールと呼ぶ場所を考えてみましょう。そこに行けば、中国製なら中国で販売されている価格で、ドイツ製ならドイツで販売されている価格で、それぞれ購入可能な50から60の冷蔵庫が並んでいます。
このような店は平壌周辺で少なくとも20店舗かそこらあることが間違いありません。ですので、現在ではマーケットではおよそ1000台の冷蔵庫がいつでも売られる準備が整っているでしょう。
それらを購買者の数とかけ合わせれば、だいたい状況がどのようなものか推定することができます。
平壌の人々は、公的配給制度(PDS)だけでは生活していません。それだけでは不可能です。
NKニュース:PDSは平壌で今も機能しているのですか。
フィスラー:そうです。ある家族が、彼らの必要以上にコメを入手することができるとしたら、それはほかの何かの物と取引されています。
また、PDSの質がかなり違っているとよく聞きました。彼らは何を得るかを知らないのです。それはコメであったり、コメとトウモロコシの交ぜものだったり、芋だったり、大麦だったり……。彼らが入手するものはまったく一貫性がありません。
人の移動が少ない
NKニュース:あなたが勤務してきたほかの国々と北朝鮮を比較するとどうでしょうか。
フィスラー:比較するのはとても難しいです。基本的に、北朝鮮の地方を、たとえば、インド南部の地方とは比較できない。
北朝鮮の人々は基本的に必要最低限の生活を営んでいる。本当にそうです。私は北朝鮮国内で商取引や輸送がまったくないことにいつも驚嘆してきました。
アフリカなどほかの国々の地方では、ものすごい量のバスが人々をA地点からB地点へとつねに運んでいる。市場向けの商品もA地点からB地点に輸送されている。村から隣の都市にといった具合に。このようなことは北朝鮮では見られないし、存在しない。この点が非常に興味深い点です。
私は北朝鮮の沿岸部への出張を思い出します。沿岸の道路では3キロメートルから5キロメートルごとに村が存在します。2時間ほどの間で私は建設用の木材を積んだトラックを目撃しました。ほかには何も見ませんでした。このことから、北朝鮮中の地域では、どれほど商品が取引されず、そして、移動されていないかがわかるかと思います。
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