「単品よりセットがお得」思考が"危ない"ワケ 売り手の立場で考えると「損得」がわかる

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たとえば、ケータイとネット料金のセットや、ガスと電気のセットなどがそれだ。こうしたサービスは日々価格競争が行われており、安いプランや業者が次々登場するものだが、セット契約の場合は見直しが難しい。どちらかだけ外す、ということは、セットという構造上なかなかできなくなっているからだ。

以前、ガスと電気のセットプランについて取材をした際、こんな話も聞いた。割引を目玉にしたプランとして、ガスAコースと電気Aコースがセットになっているとしよう。しかし実は、この電気Aコースは、ほかのコースよりもともとの料金設定が高いのだという。もっと安い電気Bコースを現在使用している人が、セット割引のためにそっちに乗り換えることがいちばんトクかというとそうでもない。安いガスのコースを単体で探してきて、ガスと電気を別々に契約したほうが、このセットプランよりさらに安くなる可能性があるというのだ。

セットになると、途端にプランの実態が見えなくなる。見えたとしても、判断が鈍る。セット料金を見たときは、割引の文字に思考停止することなく、中身をじっくり吟味すべきだろう。毎月払い続けて固定費になるようなものならなおさらだ。

では、トクするセットの利用法は?

じゃあ、セットはすべてソンなのか? もちろん、すべてがそうとも言えない。選び方次第で、賢い買い方にも変えられる。

たとえば3品セット買いの場合。3品バラバラのものを買うのではなく、同じものを2つ、あるいは3つ使えばサブのストックとして使えるだろう。靴下なら、うち同じ色を2足買えば、片方に穴が開いても両方捨てずに済む。3種類別々のものを選ぼうとすると、つい大して気に入らないものまで買ってしまったりと苦労するが、2品プラス同じもの1つ、と考えれば失敗は少なくできる。

また逆に、自分が「売り手」の側になるときは、このセット販売を利用しない手はない。ネットオークションの達人などには、この特性を活用している人もいる。商品のパッケージに1つ目玉になる商品を入れ、ほかに単品では高く売れない品を組み合わせることで、そこそこいい売り値することもできる。

キャラクターシャツ5枚入りセットなど、まとめ売りにして量でお得感を出して高めに売る方法もあるだろう。趣味に使うものを何品か売りたいなら「初心者向けセット」と名付けてインパクトを出すのもいいかもしれないし、まさにアイデア次第だ。

最後に、先日筆者が遭遇した激安セット販売について記しておこう。地方都市でフラッと入ってみた地場の100円ショップで、「ペットボトル飲料よりどり2本で100円」という表示に出合って驚いた。これまで100円ショップのペットボトル飲料は通常100円以下には値下げできないため、ほかの小売店が激安価格をつけると価格面で負けてしまっていたのが、なるほどこの手があったわけだ。

さすがの筆者も、必ず飲む飲料で、2本で100円という安さであれば、ムダ出費とまでは言えない。さらに、手袋・マフラーなど衣料雑貨のよりどり2品で100円コーナーがあり、ここでもついつい2品購入してしまった。セット販売でも、100円ショップは最強かもしれない。

松崎 のり子 消費経済ジャーナリスト

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まつざき のりこ / Noriko Matsuzaki

20年以上にわたり『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』などのマネー記事を取材・編集。家電は買ったことがなく(すべて誕生日にプレゼントしてもらう)、食卓はつねに白いものメイン(モヤシ、ちくわなど)。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成。「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアも研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)、『定年後でもちゃっかり増えるお金術』(講談社)。
【消費経済リサーチルーム】

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