エスカレーター「片側空け」奨励する国もある 日本では「歩行は危険」と禁止の方向だが…

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その後ロンドンでは、これらの「故事」にならい、「立つのは右側、空けるのは左側」というのが定着したようだ。また、エスカレーターの運転では、上りは左側、下りは右側(つまり、左側通行)が基本となっている。

ちなみに、ロンドン地下鉄ではずいぶん昔から、マナー遵守を促すさまざまなポスターを作っている。「エスカレーターでは右に立って!」と訴えるもののうち、筆者が確認できた最も古いものは1944年製だから、遅くとも第二次大戦中にはこのルールの定着を進めていたことになる。

「右側に立て」と記すロンドン地下鉄構内の表示(筆者撮影)

冒頭で書いたように、ロンドン地下鉄のエスカレーターは日本のものよりはるかに速い。感覚値でしかないが、東急の横浜駅に設置されている「高速」エスカレーターよりも確実に速いので、日本でふだん暮らしている人がロンドンに来てエスカレーターに乗ったら「怖い」と感じるのも無理はない。

にもかかわらずだ。「追い越し車線」に当たる左側を周りより遅いペースで歩いて上がって行くと、後ろから「よけろ」とか「早く行け」といった声がかかることもある。つまり高速道路で言うところの「アオリ」を食らうわけだ。

歩くのに疲れて列を移動する人も

ロンドン地下鉄で最も長いエスカレーターはノーザン線エンジェル駅にある。全長は60m、エスカレーター両端の標高差は27.5mもある。この勾配、この距離を「追い越し車線」を使って、いつもの調子で空いている左側を歩き出す人がいるものの、あまりの長さでグッタリしてしまい、途中で「歩きながら上りの列」からリタイア、右側の「歩かない人」の列に入り込んでしまう人が結構いる。

エスカレーターの右立ちが定着しているロンドンでは、「動く歩道」でも左を空ける習慣がある。普通の道路を歩くよりも動く歩道を歩いた方が当然速いので、急ぐ人にはうれしいしきたりとなっている。ヒースロー空港の地下鉄駅とターミナルの間には動く歩道が何本も使われているが、ロンドンに着いたばかりの旅行者が動く歩道の左側にぼんやり立っていると、露骨に「どいてくれ」と声がかかったりするが、これはちょっとかわいそうな仕打ちだなあ、と思ってしまう。

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